【三里河中国経済観察】東北サッカーリーグ誕生へ 体育経済の新たな原動力に
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【11月24日 CNS】ここ数日、遼寧省(Liaoning)瀋陽市(Shenyang)で一見すると普通の優勝報告会が行われたが、その場には明らかに特別な意味が込められていた。
この日、全国体育大会で優勝した遼寧U18男子サッカーチームを迎えた際、中国共産党遼寧省委員会の主要指導者は、東北地域で都市サッカーリーグの開催を推進し、サッカーに携わる人たちが活躍できる場を増やし、より良い環境を整備し、市民が参加しやすい都市型サッカーを大きく広げ、中国サッカーの振興にともに力を注ぐ必要があると述べた。
この中でも「東北地区都市サッカーリーグの開催を推進する」という言葉は特に注目に値する。「蘇超」(江蘇省<Jiangsu>の草の根サッカーリーグ)の成功は、サッカーという競技が消費を活性化し、観光や文化と結びついた分野を強く動かす力があることを証明している。東北が全面的な振興と新たな突破口を模索している重要な時期に、サッカーは地域経済の新しい火付け役になれるのだろうか。東北はかつて数多くの名選手を生み、中国サッカーの栄枯盛衰をともに歩んできた地域だ。遼寧サッカーを例にとれば、かつて若手中心で黄金期を築いた「遼小虎」から、現在の遼寧女子チーム、大連市(Dalian)のサッカークラブ「大連英博(Dalian Yingbo F.C.)」まで、中国サッカーにとって欠かせない拠点となってきた。
今回の遼寧U18の優勝は、東北のサッカーDNAが今も健在で、育成への継続投資が着実に成果を上げていることを示している。こうしたタイミングで「東北地区都市サッカーリーグ」を構想するのは、単なる大会計画にとどまらず、スポーツ分野における地域連携の重要な一手であり、行政の垣根を越えて都市圏の活力を引き出す試みでもある。歴史を振り返れば、東北の栄光も苦難も、重厚な工業の歴史と深く結びついている。サッカーはかつてこの地域を象徴する文化の一つであり、その盛衰は地域の変化を映し出す存在でもあった。
東北が全面振興へ向けて険しい坂を登っている今、サッカーは人びとの気持ちを一つにまとめ、活気を生み出す重要な媒体となり、振興の勢いを高める力になる可能性がある。海外にも、サッカーを通じて地域の活力を引き出し、再生を実現した事例がある。たとえばドイツのルール地方。かつて重工業地帯だったこの地域は、ボルシア・ドルトムント(Borussia Dortmund)やシャルケ04(FC Schalke 04)といったクラブが台頭したことで、サッカーが地域を象徴する文化となり、大きな変革を生む原動力になった。サッカーはルール地方のイメージを変えるだけでなく、産業の転換や地域の一体感づくり、外への発信力を高める新たな名刺となった。
スポーツ経済の世界的な動きを見れば、サッカー大会は都市の競争力を高める大きなエンジンとなっている。イングランド・プレミアリーグは、毎年英国経済に数十億ポンド(約2058億9000万円)規模の貢献をしている。2025年には「蘇超」を代表とする草の根サッカーが驚くほどの勢いを見せた。初戦の平均観客数は約7000人、決勝トーナメントでは平均4万人に達し、この盛り上がりが江蘇省全域で多様な消費を押し上げ、累計380億元(約8406億4740万円)を超える経済効果を生んだ。
8月22日に開かれた国務院常務会議でも、スポーツ産業とスポーツ消費の発展は内需拡大の戦略を進めるうえで重要な内容だと指摘されている。東北には瀋陽市、大連市、長春市(Changchun)、延辺朝鮮族自治州(Yanbian Korean Autonomous Prefecture)など、サッカー文化が深い都市が揃っており、地域型の都市サッカーリーグを作り上げる土台と実力は十分に備わっている。もし東北地区都市サッカーリーグが実現すれば、政策、資金、人材が再びこの「黒土地帯」に集まり、多方面でプラスの効果が期待できる。
まず、スポーツ経済の新しい成長源となり、試合運営、スポーツ観光、関連商品の開発など産業全体の活性化につながる。次に、人材の「貯水池」ができ、地元の若い選手に安定した競技環境を提供できる。さらに、地域の文化的な一体感が深まり、サッカーをきっかけに東北の都市群の結束が強まる。
そして、新しい東北の姿を全国に示し、積極的に発展する地域であるというメッセージを届けることができる。
この地域は、挑戦する精神にも、スポーツ人材にも事欠かない。東北が振興の重要な段階にある今、サッカーは地域の活力を引き出す切り札となり、振興の歩みに不可欠な力をもたらす可能性を秘めている。(c)CNS-三里河中国経済観察/JCM/AFPBB News