【11月4日 AFP】イスラエル国会(クネセト)の国家安全保障委員会は3日、「テロリスト」に死刑を科す法案を可決した。法案は、極右イタマル・ベングビール国家治安相が推進していたものだ。

刑法改正案は今後、第1読会で審議される。

イスラエル政府で人質問題を担当するガル・ヒルシュ氏は、自身とベンヤミン・ネタニヤフ首相もこの法案を支持していると述べた。

ベングビール氏は、この法案が9日までに議会を通過しなければ、自身が率いる極右政党「ユダヤの力」は右派連合への協力をやめると警告。ネタニヤフ政権は存続の危機にひんしている。

イスラエルでは少数の犯罪について死刑が規定されているが、1962年にナチス・ドイツによるホロコースト(ユダヤ人大量虐殺)の加害者であるアドルフ・アイヒマン以来執行されておらず、事実上の死刑廃止国となっている。

委員会は声明で、「この法案の目的は、テロリズムを根絶し、強力な抑止力を生み出すことだ」「人種差別やイスラエル国民への憎悪に基づき、イスラエル国を害する意図を持って殺人を犯したテロリストには、死刑を科す。裁量の余地のない」と述べている。

死刑は裁判官の過半数の賛成によって言い渡され、減刑はできないものとされる。

■危険な措置

ヒルシュ氏は以前、パレスチナ自治区ガザ地区で拘束されている人質への懸念を理由に、この法案に反対していた。

だが声明によると、ヒルシュ氏は「人質は今やイスラエルに帰還しているため、もはや反対する意味はない」と述べた。

「ネタニヤフ首相もこの法案を支持している。私はこの法案が、われわれの武器庫にテロ対策と人質解放のための新たな手段をもたらすと考えている」と付け加えた。

この法案は、ユダヤの力所属議員によって提出された。

ベングビール氏は3日、「この法案に裁量の余地はない」「殺人を企てるテロリストは、死刑という唯一の刑罰しかないことを知らなければならない」と述べた。

ベングビール氏は10月31日、イスラエル国旗の前で両手を縛られうつぶせに横たわるパレスチナ人囚人12人を指さしながら、カメラに向かって「テロリストには死刑を」と訴える動画を自身のテレグラムチャンネル投稿した。

パレスチナ自治政府(PA)の外務省は、この措置を「パレスチナ人に対するイスラエルの過激主義と犯罪行為をエスカレートさせる新たな形態だ」「正当性を装ってジェノサイドと民族浄化を継続しようとする危険な措置だ」と非難した。

パレスチナのイスラム組織ハマスも、この措置を「ならず者シオニスト占領国家イスラエルの醜悪なファシズム的側面を体現するものであり、明白な国際法違反だ」と非難。

「国連、国際社会、そして関係する人権・人道支援団体に対し、この残虐な犯罪を阻止するために直ちに行動を起こすよう求める」と付け加えた。(c)AFP