【三里河中国経済観察】A株で「易中天」が急上昇 AI加速で光電共封装技術に注目集まる
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【10月8日 CNS】A株市場に「易中天」が現れた。
もっともここで言う「易中天」とは、「三国志」を論じた学者の名前ではなく、「新易盛(Eoptolink Technology)」「中際旭創(Zhongji Innolight)」「天孚通信(TFC)」という3社の上場企業を合わせた呼び名だ。
2025年4月の安値と比べると、新易盛の株価は5倍以上、中際旭創は4倍以上、天孚通信は3倍以上に上昇している。
この「易中天」の急騰の背景には、人工知能(AI)ブームのなかで脚光を浴びるCPO(光電共封装:Co-Packaged Optics)技術の存在がある。CPOはAIの演算処理を支える基盤技術として注目されており、AI時代のインフラとも言える「算力(コンピューティングパワー)の高速道路」を築いている。
3社はいずれもこのCPO技術に深く関わっている。
CPOは光通信モジュールにおいて、従来の電気伝送を置き換えることで低消費電力・小型化・高速通信を実現する技術だ。AIの進化とともにデータセンターでは通信効率の要求が急上昇し、従来の銅線ベースの伝送技術は物理的限界に近づいている。
通信速度が50ギガから800ギガ、さらに1.6テラへと進化する中で、CPOは信号変換のプロセスを減らすことで、伝送速度と消費電力のトレードオフを解決した。
市場調査機関Yoleの予測によると、グローバルAI企業による投資の拡大を背景に、CPO市場は2024年の4600万ドル(約69億1702万円)から2030年には81億ドル(約1兆2179億円)へと急拡大し、年平均成長率は137%に達するとされる。この爆発的な成長見通しが、投資家の熱気を一気に引き上げた。
「易中天」の3社はまさにこの技術革新の恩恵を受けている。
業績の伸びはCPO実用化の進展と足並みを揃えており、AI関連銘柄ブームの象徴となっている。2025年上半期の決算では、新易盛の売上高が104.37億元(約2204億3465万円)で前年同期比282.6%増、純利益は39.42億元(約832億5701万円)で355.7%増。中際旭創は売上高147.89億元(約3123億5107万円、36.9%増)、純利益39.95億元(約843億7639万円、69.4%増)。天孚通信は売上高24.6億元(約519億5643万円、57.8%増)、純利益8.99億元(約189億8732万円、37.5%増)となり、いずれも高成長を記録した。
この「易中天」の熱狂は、本質的にはAI産業の急拡大が引き起こした算力需要の爆発に他ならない。
国際調査会社フロスト・アンド・サリバン(Frost & Sullivan)のデータによると、2025年上半期の中国大規模AIモデルの企業利用量(日平均トークン数)は前年比363%増の10兆トークンを突破し、算力需要は指数関数的な伸びを示した。
現在、人工知能は「コンテンツ生成」から「タスク実行」へ、そして「特化型知能」から「汎用知能」へと進化している。そのたびに求められる演算能力の水準は一段と高くなっている。この急増する需要に対応するため、中国の大手企業は算力インフラへの投資を加速。高速光モジュールや高性能CPO技術の研究開発を強化し、1.6テラクラスの光通信モジュールの量産段階へと踏み出している。技術アップグレードによって算力の供給不足を補い、AI開発のボトルネックを打開しようとしているのだ。算力需要の急膨張の背後には、政府によるAI産業支援の後押しがある。
中国国務院は2025年8月、「『人工知能+』行動の本格推進に関する意見」を発表。
2027年までにAIと6つの重点分野(製造、交通、金融、医療、教育、公共サービスなど)の深度融合を実現し、新世代スマート端末や知能エージェントの普及率を70%以上に引き上げる方針を明確にした。
AI経済の中核産業も急速に拡大すると見込まれている。
こうした政策のもと、中国のAI業界では「基盤層―モデル層―応用層」という三層構造が形成されている。さらに、国産のオープンソース大規模モデルも急速に進化し、国際的トップモデルとの差が縮まる中で、算力関連産業に広大な応用空間を生み出している。
「易中天」の台頭からAI産業全体の発展まで、中国はAI分野における全方位的な競争力の構築を進めている。
ハードウェア面では、中国企業は世界の光モジュール市場で重要なシェアを占め、800ギガモジュールが普及段階に入り、1.6テラなどの高性能モジュールも試験段階から商用化へ移行している。ソフトウェア面では、国産大規模モデルが基礎性能・推論効率・マルチモーダル技術の分野で次々と成果を上げ、ハードとソフトが連携して成長する構造ができつつある。
さらに注目すべきは、AI技術が中国の実体経済に深く浸透している点だ。伝統的製造業からハイテク産業まで、AIは現場の実情に合わせて産業構造を再編しており、「技術+実用シーン」の両輪が中国産業の成長エンジンとなっている。
「易中天」の株価上昇は偶然ではない。
「人工知能+」行動計画の進展と算力インフラの高度化が進むなかで、中国はAI応用大国からAIイノベーション強国へと進化しつつある。世界的なAI競争の舞台で、中国は着実に「加速度」を上げている。(c)CNS-三里河中国経済観察/JCM/AFPBB News