【9月20日 AFP】米ニューヨーク連邦地方裁判所は19日、同国に合成麻薬「フェンタニル」の原料を密輸したとして、中国企業の元幹部に拘禁25年の実刑判決を言い渡した。司法省が同日発表した。

判決を受けたのは、中国・武漢に拠点を置く化学品メーカー「湖北精奥生物科技(Hubei Amarvel Biotech)」幹部の王慶周(Qingzhou Wang)被告(37)。同じく同社幹部の陳依依(Yiyi Chen)被告(33)と共に2月、フェンタニルの前駆体の密輸とマネーロンダリング(資金洗浄)の罪で有罪判決を言い渡された。

陳被告は8月22日、禁錮15年の実刑判決を言い渡された。

麻薬取締局(DEA)のテランス・コール長官は声明で、「これらの幹部は、中国の化学品メーカーを毒物の供給経路と化し、フェンタニルの前駆体数百キロを日用品に偽装して米国に持ち込み、暗号通貨で利益を得ていた」と述べた。

王被告と陳被告は、米国にフェンタニルの原料を密輸したとして2023年6月に司法省に起訴された中国人8人と中国企業4社の一部。

米国で発見されるフェンタニルの大部分はメキシコで生成されている。原料をメキシコではなく米国に密輸したとして、中国企業が米国で起訴されたのは今回が初めて。

フェンタニルは合成オピオイドで、ヘロインの50倍の効力を有する上、生成がはるかに容易で安価だ。米国では、オキシコドンなどのオピオイド系鎮痛剤やヘロインに取って代わり、フェンタニルが過剰摂取の原因となっている。

2023年6月に中国人と中国企業が起訴されたことを受け、中国政府は米国に抗議した。

中国外務省は当時、「これは完全に違法であり、中国国民と中国企業の基本的人権を甚だしい侵害するものだ」「中国はこれを強く非難する」と述べた。

米国で販売されるフェンタニルの主な供給源はメキシコだったが、米政府は今、中国に拠点を置く原料供給業者に焦点を絞っている。(c)AFP