【8月23日 AFP】ロシアと国境を接するウクライナ東部ドンバス地域(ドネツク、ルハンスク両州)は、米国が仲介するロシアとウクライナの和平交渉の焦点となっている。

米シンクタンク「戦争研究所(ISW)」によると、ロシアはドネツク州の79%、ルハンスク州のほぼ全域を掌握している。

一方ウクライナは、ドネツク州のうちロシアに掌握されているのは67~69%だと主張している。

ロシアはドンバス全域の割譲を要求しているが、ウクライナは、ロシアが長年の試みにもかかわらず、いまだドンバスを完全掌握できていない点を指摘し、割譲することはないと表明している。

ISWによると、ウクライナはドネツク州で、北はスラビャンスクとクラマトルスクから南はコスチャンティニウカとドルジュキーウカに至るまで「要塞(ようさい)地帯」を築いている。

ISWは、「ウクライナは(2014年以降の)過去11年間、要塞地帯の強化に時間、資金、労力をつぎ込んできた」と指摘。

「ロシア軍は現在、この要塞地帯を迅速に包囲または突破する手段を持たず」、包囲・突破に何年も要する可能性が高いとの見方を示した。

■今後の展開

ドンバスの放棄は、ウクライナの将来の安全保障に壊滅的な結果をもたらす可能性がある。

ストックホルム東欧研究センターのアナリスト、アンドレアス・ウムランド氏は、ドンバスを放棄すればいずれ、「ウクライナのより奥深くへの侵攻の扉を開くことになるだろう」と述べた。

ISWは、ドンバスの境界は平坦で、地勢的に要塞化に適していないと指摘。ドンバスを放棄した場合、ウクライナの防衛力は現在の防衛線と比べて大幅に低下するとの見解を示した。

これにより、人口100万人を抱える要衝ドニプロとハルキウへの道が開かれる可能性もある。

ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、同国にとってドンバスがいかに戦略的に重要かを強調し、「わが国の存亡に関わる問題だ」と総括した。(c)AFP