イスラエル極右閣僚、パレスチナ国家承認に対抗 入植地拡大し「何も残さない」
このニュースをシェア
【8月15日 AFP】イスラエルの極右ベツァレル・スモトリッチ財務相は14日、複数の国がパレスチナを国家承認する意向を表明したのに対抗し、占領するパレスチナ自治区ヨルダン川西岸を南北に分断する形でユダヤ人入植者住宅3400戸を建設する計画を支持し、ヨルダン川西岸の併合を呼び掛けた。
これに対し、国連のアントニオ・グテレス事務総長は、この計画を実行すれば、イスラエルとパレスチナが平和的に共存する2国家解決への期待に「終止符を打つ」ことになると警告した。
イスラエルは長年、エルサレムと既存の入植地マーレアドゥミムの間に位置する「E1」と呼ばれる約12平方キロの土地に入植者住宅を建設する野望を抱いてきたが、国際的な反対を受け、計画は数十年にわたって凍結されてきた。E1の近くにはヨルダン川西岸を南北に結ぶ道路も通っている。
ヨルダン川西岸におけるイスラエル人入植地は国際法上違反で、E1での住宅建設は、国際社会は東エルサレムを首都とする将来のパレスチナ国家樹立への期待を損なうと警告している。
また、イスラエルの分離壁を拡張してE1を囲む計画もあるが、こちらも凍結されている。
スモトリッチ氏はE1計画の進捗(しんちょく)に関する入植推進派のイベントで、「今、パレスチナを国家承認したがっている人々は、現場でわれわれの返答を受け取ることになるだろう。具体的な行動を通じて、住宅、街、道路、そして性格を営むユダヤ人家族を通してだ」と述べた。
「この重要な日に、私はベンヤミン・ネタニヤフ首相に対し、ユダヤ・サマリア(イスラエルが1967年以降占領しているヨルダン川西岸の一部地域を指す呼称)にイスラエルの主権を適用し、国を分割する考えを完全に放棄し、9月までに偽善的な欧州指導者たちが承認するものを何も残さないようにすることを求める」と続けた。
英国とフランスなど数か国が最近、年内にパレスチナを国家承認する計画を発表し、2国家解決を維持する意向を示している。
国連のステファン・ドゥジャリク事務総長報道官は、「われわれがイスラエル政府に実行しないよう求めているこの計画が実行されれば、ヨルダン川西岸の北部と南部が分断されることになる」「イスラエル財務相、パレスチナ側、そして他のNGOがすべてが同意しているように、2国家解決の望みは完全に絶たれることになるだろう」と述べた。
パレスチナ外務省も計画を非難し、「真の国際的介入とイスラエル占領軍への制裁措置によって、計画を中止させる」よう求めた。
さらに、「E1地区における入植者住宅建設は、パレスチナ国家樹立の機会をつぶそうとするイスラエル占領軍の計画の一環だ」と付け加えた。
欧州連合(EU)の外相に当たるカヤ・カラス外交安全保障上級代表は、この計画は「国際法違反であるだけでなく、2国家解決をさらに損なう」ものだと非難し、イスラエルに「中止」を求めた。
ヨルダン川西岸での入植活動を監視するイスラエルのNGO「ピース・ナウ」は、E1計画を「イスラエルの将来と、平和的な2国家解決の実現可能性にとって致命的」だと非難した。
同NGOによると、同計画の最終承認公聴会が20日に国防省傘下の技術委員会によって開催される予定だが、委員会はすでに計画に対する異議をすべて却下している。
ピース・ナウによると、事務手続きの完了後、「E1のインフラ整備は数か月以内に、住宅建設は約1年以内に開始される可能性がある」。
ヨルダン川西岸では、パレスチナ人約300万人が暮らす一方、入植地に約50万人のイスラエル人も居住している。(c)AFP