【7月24日 AFP】タイとカンボジアの国境地帯の国境が定まっていない係争地で対立が激化する中、24日のカンボジア軍による攻撃でタイの民間人1人が死亡、3人が負傷した。

両国とラオスの国境が交わる「エメラルド・トライアングル」と呼ばれる地域をめぐり、タイとカンボジアは激しく対立している。この地域には古代寺院が数多く存在する。

この争いは数十年にわたり続いており、15年以上前には軍事衝突に発展。今年5月にも銃撃戦が起き、カンボジア兵1人が死亡する事態となった。

24日朝、タイのスリン県とカンボジアのオッダーミエンチェイ州の国境地帯にある二つの寺院付近で新たな戦闘が発生した。

カンボジア国防省のマリー・ソチェアタ報道官は、「タイ軍が、自国の主権領域を守るために駐留するカンボジア軍への武力攻撃を開始し、カンボジア王国の領土保全を侵害した」と発表。

「これに対し、カンボジア軍は国際法に完全に従って正当な自衛権を行使し、タイの侵攻を撃退し、カンボジアの主権と領土保全を守った」と続けた。

タイ軍は、先に手を出したのはカンボジア兵士だと非難。その後、スリン県カプチョン郡の集落にロケット弾2発が着弾したとして、カンボジア軍による「民間人を狙った攻撃」を非難した。

タイ首相府は、24日にカンボジア軍の砲撃によりタイの民間人1人が死亡したと発表。声明で「カンボジア軍の砲弾が民家に着弾し、住民の民間人1人が死亡、5歳の子ども1人が重傷を負い、2人が負傷した」と述べた。

タイ軍によると、衝突は午前7時35分(日本時間同9時35分)ごろ、タムエン寺院を警備していた部隊が上空を飛行するカンボジアの無人機の音を聞いたことから始まった。

その後、カンボジア軍によると、武装した同国兵6人がタイ軍駐屯地前の鉄条網に接近した。うち1人は携行式ロケット弾を携行していた。

カンボジア兵らは警告の声を上げたが、午前8時20分(日本時間同10時20分)ごろ、タイ駐屯地から約200メートル離れた寺院東側に向けて発砲した。

タイのプームタム・ウェーチャヤチャイ首相代行は、「この事態は慎重な対応が必要であり、国際法に従って行動しなければならない」「主権を守るために全力を尽くす」と述べた。

在カンボジア・タイ大使館はフェイスブックへの投稿で、カンボジア国民に対し、緊急の理由がない限り、「できるだけ早く」カンボジアから退去するよう呼び掛けた。(c)AFP