「ライトスタイルフィッシング」人気拡大 新たな消費と観光を促進
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【8月19日 東方新報】中国・江西省(Jiangxi)南昌市(Nanchang)の八一公園で、22歳の郭雲飛(Guo Yunfei)さんはショルダーバッグから折りたたみ式の釣り竿を取り出し、糸を整えると、手際よく針を水面に投げ入れた。湖畔や橋の上では、数十人の釣り愛好家たちが小さな釣り竿を片手に、のんびりと釣りを楽しんでいる。
郭さんの道具は、腕の長さほどのコンパクトなミニ釣り竿に、軽量の釣り糸、針、ウキ、エサなどを組み合わせたもので、狙いは主にオイカワや小鮒(コブナ)といった小魚だという。彼は「小さな川や池でも釣り場になります。まるでスマホゲームの釣りを実際に体験しているみたいで楽しいです」と語った。
中国釣りスポーツ協会のデータによれば、現在中国には約1億4000万人のアクティブな釣り人口が存在し、その中で若年層が増加傾向にある。釣り道具の軽量化が進むとともに、道具が携帯しやすく、場所に制限がなく、所要時間も柔軟で、体力の負担が少ない「ライトスタイルフィッシング」という新たなスタイルが広がりを見せている。
「ライトスタイルフィッシング」が盛り上がりを見せている背景には、近年の都市河川の整備や、市民のためのレジャースペースの充実がある。南昌市内では、八一公園、象湖湿地公園、魚尾洲公園のほか、贛江(Gan River)や撫河(Fu River)など釣りが許可された水域において、救命設備や照明、防犯カメラなどの設備が整備され、安心して釣りを楽しむことができる。
南昌市在住で釣り歴10年以上の周理顕(Zhou Lixian)さんは「街中の水辺で気軽に釣りができるし、最近では屋内釣り施設もあり、子どもと一緒に楽しめるのがうれしいですね」と語る。
江西省社会学会の副会長・袁小平(Yuan Xiaoping)氏は、「ライトスタイルフィッシングは体験型・交流型のレジャーであり、従来の釣り市場の幅を広げるとともに、業界の革新と多様な需要を生み出しています。年齢や趣味が異なる層も取り込めるのが魅力です」と述べる。
業界調査機関の頭豹研究院が釣具ブランド「漁之源」と共同で発表した「2025年中国ライトスタイルフィッシング業界スタンダード白書」によると、2024年の中国のライトスタイルフィッシング市場は約96億元(約1962億9024万円)に達し、2029年には254億元(約5193億5126万円)規模に拡大する見通しである。
ショッピングサイト「拼多多(Pinduoduo)」で「ライトスタイルフィッシング」と検索すれば、わずか数十元(数百円)で一式そろう装備が多数見つかる。中でも短尺の釣り竿は人気が高く、年間販売数は33万5000本を超える。「天猫(Tmall)」など大手ECプラットフォームでは、小型魚向けの釣り竿セットがランキング上位を占めており、「ドーパミンカラー(明るい色)」「スタイリッシュ」「DIY対応」といった若年層に訴求する特徴を打ち出す製品も増えている。
南昌市内の複数の釣具店でも、「ライトスタイルフィッシング」用品が目立つ位置に陳列されている。紅谷灘区の釣具店を経営する謝玉瓊(Xie Yuqiong)さんによると、「製品の軽さ・機能性・携帯性が選ばれる決め手となっています。最近ではカラフルなカプセル型竿や親子セットも人気です」と話している。
また、各地では郊外や観光地に専用の釣りエリアを設ける動きが進んでおり、休暇中の消費スタイルを多様化させると同時に、地元の観光・文化産業にも波及効果をもたらしている。
例えば、江蘇省宿遷市(Suqian)宿城区の王官集鎮では「釣り文化クリエイティブ産業パーク」を設立し、1本の釣り竿を起点に住民の生計を支える産業を築き、1100人の雇用を創出。四川省(Sichuan)南充市(Nanchong)南部県では、昇鐘湖景区を活用し、これまでに13回の国際釣り大会を開催し、観光収入は28億元(約580億円)を超えた。江西省の廬山西海風景区では、豊富な水産資源と清らかな水質が多くの観光客を引きつけており、釣り体験と温泉、川下り、民宿などを組み合わせた複合型観光が進んでいる。
同地区にある「廬山西海瑤池湾国際釣りセンター」の責任者・蒋忠仁(Jiang Zhongren)氏は、「水上民宿や魚料理の飲食施設と組み合わせることで『釣りと遊びの複合施設』として展開しています。今年すでに5万人の観光客を迎えており、うち30歳未満の若者が全体の30~50%を占めています」と語った。(c)東方新報/AFPBB News