【7月16日 AFP】シリアの暫定政権軍は15日、ドルーズ派住民が多数を占めるスウェイダ県で、民間人に対する「即決処刑」を行ったとして非難された。一方、イスラエルは、現地の宗教的少数派を守るために暫定政府軍に対して攻撃を行ったことを明らかにした。

シリアの暫定政権は、イスラム教の少数派ドルーズ派武装勢力とベドウィン(遊牧民)の間で多数の死者を出した衝突を受け、部隊をこの地域に投入。国防相は同日、政府軍が進入したスウェイダ市で停戦を宣言した。

しかし地元住民らはAFPに対し、この発表は現地でほとんど効果を持たなかったと語り、政府軍と同盟勢力がドゥルーズ派の地域を荒らし回っていると非難した。

英国に拠点を置くNGO「シリア人権監視団」は同日、スウェイダ周辺でドルーズ派の民間人21人が政府軍とその同盟勢力により処刑されたと明らかにした。

同監視団によると、13日午前以降の衝突による死者は少なくとも203人に上り、その内訳は治安部隊93人、ドルーズ派住民71人、ベドウィン18人としている。

また監視団は、「国防省と内務省の部隊がスウェイダ市内の地元住民が所有するゲストハウスに突入し、市民12人を即決処刑した」と発表。さらに、暫定政府に関連する武装グループが、県内で母親の目の前で3人の兄弟を射殺したとも伝えた。

隣国イスラエルは、自国にもコミュニティーを持つドゥルーズ派を保護するとし、また、シリア南部への部隊展開は安全保障上の脅威になるとして暫定政権に警告を発している。

イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相とイスラエル・カッツ国防相は15日、「暫定政権の部隊およびドルーズ派に使用される兵器」に対する攻撃を行ったと発表。「ドルーズ派への危害を防ぎ、またシリアとの国境に隣接する地域の非武装化を確保するために行動している」とする共同声明を出した。

シリア国営メディアもイスラエルの攻撃について報じた。

他方で、ムルハフ・アブカスラ国防相は15日正午直前、地元代表との会談後にスウェイダ市で「完全な停戦」を宣言した。

しかし同日夜、内務省は「一部の地域でなお衝突が続いている」とし、支配の回復に向けた努力が進められていると発表。また、地元代表との合意について「武装した無法集団が攻撃を再開し、警察や治安部隊を標的にしたため、すぐに破られた」と述べた。

AFP特派員によると、部隊進入後のスウェイダ市では、遺体が通りに放置され、銃声が散発的に響いていた。

自宅に身を潜めているという現地住民はAFPに電話で、「私はスウェイダの中心にいる。処刑が行われ、家や商店が焼かれ、強盗や略奪が起きている」と述べた。

南部での衝突は、昨年12月、イスラム主義勢力が14年近くにわたる内戦の末にバッシャール・アサド元大統領を排除し、暫定指導者アフマド・アル・シャラーが誕生して以降、同氏が直面する治安上の課題を浮き彫りにしている。(c)AFP