【7月2日 AFP】インド亡命中のチベット仏教最高指導者ダライ・ラマ14世は2日、自身の死去後に生まれ変わりを探す600年の伝統を持つ「輪廻(りんね)転生」制度を継続すると表明した。

これはチベット人だけでなく、ダライ・ラマを非暴力、慈悲、そして中国統治下のチベットにおける文化的アイデンティティーのための永続的な闘争の象徴とみなす世界中の支持者にとっても画期的な決定だ。

チベット人によると、ダライ・ラマ14世はダライ・ラマの14代目の転生者。声明は6日の90歳の誕生日に合わせて発表された。

ダライ・ラマは、数十年にわたり居住しているインドのヒマラヤ山脈の町で行われた宗教指導者による会議の冒頭で流されたビデオメッセージで、過去14年間にわたり、亡命中のチベット人、ヒマラヤ地域、モンゴル、ロシアと中国の一部の仏教徒から、「輪廻転生制度の存続を切実に求める」訴えを何度も受けてきたと述べた。

「特に、チベット本土のチベット人からさまざまなチャンネルを通じて、同様の訴えを受け取っている」と続けた。

公式翻訳によると、ダライ・ラマは「こうした要請すべてに従い、輪廻転生制度を継続することを表明する」と付け加えた。

中国人民解放軍は1950年、チベットに進駐。1959年、これに反発するチベット人らが首都ラサで蜂起したが、中国軍に鎮圧された。以来、ダライ・ラマら数千人のチベット人がインドで亡命生活を送っている。

ダライ・ラマの高齢も、チベット指導部の将来と、ダライ・ラマの後継者というデリケートな問題への懸念を引き起こしている。

中国はダライ・ラマを反逆者で「分裂主義者」だと非難しているが、国際的に認められているダライ・ラマは、自身を「ただの仏教僧」だと表現している。

亡命チベット人の多くは、中国がチベットの支配を強化するため、独自に15世を擁立するのではないかと懸念している。

しかしダライ・ラマは2日、15世の認定に関する責任は、インドに拠点を置くダライ・ラマの事務所「ガンデン・ポタン財団にのみ」あると明言。

「私はここに改めて表明する。ガンデン・ポタン財団は、将来の転生者を認定する唯一の権限を有しており、他の誰にもこの件に干渉する権限はない」と付け加えた。(c)AFP