【7月2日 AFP】米国の対外援助事業を担う国際開発局(USAID)が1日、正式に閉鎖された。ドナルド・トランプ大政権は、約1400万人の命が失われるとの予測にもかかわらず、「慈善事業に基づくモデル」の終焉(しゅうえん)をアピールしている。

東西冷戦下、当時のジョン・F・ケネディ大統領が援助を活用して発展途上国を味方につけようと1961年に設立したUSAIDは、マルコ・ルビオ国務長官がプログラムの85%を削減したことを受け、国務省に統合された。

6月30日に行われた最後まで残った職員への送別式典で、ジョージ・W・ブッシュ元大統領とバラク・オバマ元大統領、そしてアイルランドのロックバンド「U2」のボーカル、ボノは、USAIDの活動に敬意を表し、USAIDは依然として必要だと訴えた。

ブッシュ氏は、2001~2009年の自身の政権における最大の功績の一つとして、米大統領エイズ救済緊急計画(PEPFAR)を挙げた。

ブッシュ氏はビデオメッセージで、「このプログラムは、わが国が直面している根本的な問題を浮き彫りにしている。本来なら死んでいたはずの2500万人が今生きていることが、われわれの国益になるか? 私はなると思う」と述べた。

ブッシュ氏と同様にトランプ氏を公然と批判することを控えてきたオバマ氏は、USAIDの廃止は「不可解」であり、「とてつもない過ちとして歴史に残るだろう」と述べた。

「USAIDの骨抜きは茶番であり、悲劇だ。なぜなら、USAIDは世界で最も重要な活動の一つだからだ」と続けた。

医学誌ランセットに発表された研究によると、米国の対外援助削減により2030年までに1400万人以上が死亡し、その3分の1は幼児だと予測されている。

一方、ルビオ氏はUSAIDについて、全く異なる見解を示した。

USAIDの「慈善事業に基づくモデル」は開発途上国の指導者たちの「依存」を助長するとして、貿易の方が効果的だと主張。

ルビオ氏は評論の中で、「納税者の費用で世界規模のNGO産業複合体を作り上げたこと以外、USAIDは東西冷戦終結以来、ほとんど成果を上げていない」と述べている。

また、米国の援助の受益国の多くが国連で米国に投票しておらず、ライバルである中国の方が高い支持を得ることが多いと不満をこぼした。

匿名を条件に取材に応じた国務省高官は、ランセット誌の調査は「誤った前提」に基づいていると述べ、米国は援助を継続するが、「より効率的な」方法で行うと述べた。(c)AFP