中国で人気高まるレトロカメラ体験
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【6月11日 CNS】ここ数年、中国では「電子ゴミ」と揶揄されたCCDセンサーカメラや、すぐに現像できるインスタントカメラ・チェキ、使い捨てフィルムカメラ、旧型のアイフォーン(iPhone)、さらに個性あふれる街角のレトロな撮影ブースやプリクラ店などが人気を集めている。近ごろ話題となっている「撕拉片(ピールアパートフィルム)」をはじめ、中国の消費者たちはさまざまな機材を用いて、個性的な写真表現を楽しんでいる。
なかでも、芸能人やインフルエンサーの影響により、「ピールアパートフィルム」が中国におけるレトロ写真ブームの最前線に躍り出た。
この古いタイプのフィルムは、特殊な構造と化学薬品によって素早く画像を浮かび上がらせることができる。その仕上がりの美しさこそが最大の魅力だ。写真愛好家の張婷(仮名、Zhang Ting)さんは、「複雑なフィルターや編集は不要で、コントラストの効いた写りが自然に肌を白く見せてくれる。そばかすやシワなどの欠点が適度に隠れ、顔立ちや立体感が際立つ」と語っている。
また、このフィルムはすでに生産終了となっており、「1枚撮れば1枚減る」という希少性も相まって価格が高騰。中古品オンライン取引プラットフォーム「閑魚(Xianyu)」や日本最大級のポータルサイト「ヤフージャパン(Yahoo Japan)」が提供するインターネットオークションサイト「ヤフー オークション」でも人気商品となっており、1枚の撮影で約400元(約8081円)かかることもある。これはかつての価格の20倍に相当するが、それでも「一生に一度の特別な瞬間」を残したいという人びとの需要が絶えない。
このブームに先立ち、長年レトロ写真界の定番だったのがCCDセンサーカメラである。かつては、CMOSセンサー搭載カメラに解像度や暗所性能などで後れを取っていたため、キロ単位で売られる「電子ゴミ」扱いだった。
しかし、現在のレトロ写真ファンにとって、その「欠点」こそが唯一無二の魅力だ。低い解像度がまるで美肌加工のような柔らかい質感を生み、限定的なダイナミックレンジが粒子感のあるフィルム調の写真に仕上がる。こうした千禧(2000年代)風のレトロな雰囲気を狙うのに最適とされる。今では、かつて数十元(10元は約201円)で買えたモデルが数百元(100元は約2011円)に高騰し、競争入札も珍しくない。
さらに、インスタントカメラ・チェキも根強い人気を誇る。撮影してすぐに現像できるチェキは、CCDとピールアパートフィルム両方の「いいとこ取り」で、レトロ感と実体としての記録性を兼ね備えており、若者たちにとっては日常のかけがえのない瞬間を形に残す手段となっている。
なかでも、日本ブランド・富士フイルム(FujiFilm)が販売する「instax mini12」「instax mini90」「instax WIDE300」などの機種が中国市場で人気を集めている。操作が簡単で、絞りやシャッタースピード、ISO感度などを気にせず、相手にレンズを向けてシャッターを押すだけで撮影が完了するため、写真初心者でも気軽に使える。
このような「レトロ写真ブーム」に呼応するかたちで、中国各地ではCCDセンサーカメラのシェアレンタル棚やレトロ撮影ブース、プリクラの撮影館など、体験型スポットが登場している。
天津市(Tianjin)、長沙市(Changsha)、大連市(Dalian)などの都市では、1時間あたり8~12元(約160~241円)でレンタルできるCCDシェア棚が登場。キャノン(Canon)、ニコン(Nikon)、富士フィルムなどの人気モデルが揃い、需要過多に。2000年代に流行したアニメキャラ付きのプリクラ機も復活し、ドラえもん、ハローキティ、クロミなどの人気キャラクターとコラボした4コマ写真テンプレートが好評を博している。杭州市(Hangzhou)の天目里美術館(By Art Matters)正面に設置されているクラシックな銀塩写真ブースは、世界に現存する50台のうちの1つであり、内部の機構やデザインは百年前のものを完全に再現。銀塩モノクロプリントを用い、1回につき4枚の写真が撮れる仕組みで、重厚な質感と高い階調表現が魅力とされている。100年間色褪せないと言われるその仕上がりを求め、訪れる人は後を絶たない。(c)CNS/JCM/AFPBB News