【5月14日 AFP】フランス・パリの裁判所は13日、同国の国民的映画俳優ジェラール・ドパルデュー被告(76)に対して、2021年に映画の撮影現場で女性2人に性的暴行を加えた罪で、禁錮1年6月の執行猶予付き判決を言い渡した。さらに、被害者1人ずつへの損害賠償1000ユーロ(約16万5000円)に加え、精神的損害賠償として、1人に4000ユーロ(約65万8000円)、もう1人に2000ユーロ(32万9000円)支払うようドパルデュー被告に命じた。

裁判所はまた、ドパルデュー被告を性犯罪者として登録するよう当局に命じた。

ドパルデュー被告は、200本以上の映画やテレビドラマに出演し、半世紀にわたりフランス映画界を代表してきたが、セクシュアルハラスメント(性的嫌がらせ)に対する告発運動「#MeToo(私も)」へのフランスの対応で最も注目を集め、今回の判決で名声は大きく失墜した。

ドパルデュー被告は裁判で、2021年のジャン・ベッケル監督の映画「Les Volets Verts(原題:The Green Shutters)」の撮影中に女性スタッフ2人に性的暴行を加えた罪に問われていた。

原告は、撮影現場のセットや小道具を担当する54歳の女性と、34歳の助監督の女性。

被害者の弁護士の一人は、「天才だからと言って、性的暴行が許されるわけではない」と主張した。

ドパルデュー被告は、約20人の女性から暴行や不適切な行為で告発されており、裁判が行われたのは今回が初めて。

3年間仕事を干されたと不満を漏らしていたドパルデュー被告はこの日、出廷しなかった。

しかし、現在は友人で俳優のファニー・アルダンさんが監督を務める映画に出演するため、4月から、ポルトガル領のアゾレス諸島で撮影に入っている。

ドパルデュー被告の弁護人は、控訴する意向を示している。

判決が言い渡されたのは、第78カンヌ国際映画祭の初日。ドパルデュー被告は1990年、同映画祭で『シラノ・ド・ベルジュラック』で男優賞を受賞している。

ドパルデュー被告は、フランスのメディアによってしばしば、「罰や批判から守られるモンスター」と形容されてきた。

判決について、今年のカンヌ国際映画祭で審査委員長を務める俳優のジュリエット・ビノシュさんは、この表現がずっと気になっていたとコメント。

「彼はモンスターではなく、人間だ」と話し、「司法の審理を受けるような行動を取ったことで、オーラは失われた」と付け加えた。(c)AFP