【4月21日 東方新報】「国家があなたに減量を呼びかけている」という一言とともに、「体重管理年」が始まり、中国全土で脂肪を落とすムーブメントが広がっている。その背景には、中国の成人の50%以上が過体重または肥満という現状、そして1兆元(約19兆円)を超える巨大な市場の存在がある。

「中国居民栄養与慢性病状況報告(2020年)」によると、2018年時点で中国の成人における過体重率は34.3%、肥満率は16.4%だった。この数字はさらに増加する可能性がある。「体重管理指導原則(2024年版)」では、ある研究結果として、この傾向が抑制されなければ2030年には成人の過体重・肥満率が70.5%、子どもが31.8%に達すると予測されており、農村部の成人の過体重率・肥満率は都市部を上回る可能性があると指摘されている。

 肥満は高血圧、糖尿病、高脂血症、心血管・脳血管疾患など多くの慢性病の重要なリスク要因だ。つまり、何億人もの過体重・肥満者は寿命や生活の質に影響を受けるだけでなく、将来的に深刻な健康負担と高額な医療費をもたらす恐れがある。これが「全民で脂肪を落とす」ことが急務とされる理由だ。

 そして、この国民的減量の動きと並行して、中国では1兆元規模の市場が形成されつつあり、その成長速度は世界平均を上回る可能性もある。

 まずは最も基本的な「食」から見てみよう。データによると、中国はすでに世界第3位のオーガニック消費市場となっており、2023年にはオーガニック製品の販売額が1000億元(約1兆9581億円)を突破した。アボカド、キヌア、ひよこ豆、ケール、深海魚など、栄養価が高く、ニッチな「軽食」系商品が消費者から人気を集めている。2025年には軽食市場が2000億元(約3兆9163億円)を突破する見込みだ。また、2027年には代替食市場の規模が3500億元(約6兆8536億円)を超えると予測されている。つまり食分野だけでも、軽食や代替食の概念が1000億元規模の市場を生み出している。

 次に「運動」を見てみると、国家統計局と国家体育総局が2024年末に発表したデータによると、2023年の全国のスポーツ産業総規模(総生産)は3兆6741億元(約 71兆9448億円)、付加価値は1兆4915億元(約 29兆2059億円)で、国内総生産(GDP)に占める割合は1.15%だった。その内訳を見ると、2023年のスポーツサービス業の付加価値は1兆849億元(約 21兆2440億円)に達し、スポーツ産業全体の付加価値に占める割合は72.7%で、前年より2.1ポイント上昇している。

 また、企業データベース「天眼査(TianYanCha)」によれば、現在中国国内にはフィットネス関連企業が157万5000社以上、営業・存続状態で存在している。

「食事制限」と「運動」に加えて、減量薬や体重管理向けの健康食品市場も急速に拡大している。

 以前のアナリストの予測では、世界の減量市場は1000億米ドル(約14兆円)規模に達するとされていた。中国国内でも、この分野には大きな成長の余地がある。ある調査報告では、2030年には中国の減量薬市場が149億米ドル(約2兆1307億円)を突破すると予測している。ここ数年、国内企業が減量薬市場への進出を加速させていることからも、この分野の「うまみ」がうかがえる。

 さらに、この巨大市場の拡大によって、多くの雇用も生まれている。公開情報によると、現在中国では体重管理士や健康管理士といった職種の人材が依然として大きく不足しており、これらは人々に新たなキャリアパスを提供している。

 このように、「体重管理年」が喚起しているのは、国民の健康意識だけではなく、1兆元規模の健康産業における新たな成長のチャンスでもあるのだ。(c)東方新報/AFPBB News