対立するグループに平和と経済的安定もたらすキリン ケニア
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【6月29日 AFP】ケニアのリフトバレー地方にある広大な農地で、麻酔銃を慎重に構えてキリンに狙いを定める獣医師。麻酔が効いてゆっくりと地面に倒れるキリンはローブで縛られ、目隠しが施される。
これは、ケニアの野生動物当局が進める、絶滅が危惧されるキリンを保護するためのプロジェクトの第一ステップだ。
保護されたキリンは新たな保護区に移送されるまでの約10日間を、この農場で他の7頭のキリンと共に過ごした。新しい環境に慣れるための準備期間だ。
移送先は、農場から東に約140キロのバリンゴ県にあるルコ保護区。首都ナイロビの北280キロに位置するこの保護区では、キリンの亜種の一つヌビアキリン(ロスチャイルドキリン)の再導入が進められている。
ケニアは多種多様な野生動物で有名だが、バリンゴ県などの北部地域は盗賊や民族衝突でニュースになることの方が多い。
バリンゴ県では、ポコットとイルチャムスの二つの遊牧民コミュニティーが数十年にわたり対立し、武力衝突に発展することもあった。
2000年代半ば、両コミュニティーの指導者らが対立を終わらせることを目的に、キリンの再導入プロジェクトを発足させた。
キリンで観光客を呼び込み、収益を増やし、ケニアの他の地域と同様に無職の若者が多いこの地域で雇用を創出することが、緊張緩和につながると期待してのプロジェクトだ。
保護区を管理するレビー・セベイさん(34)は、試みはうまくいったと感じている。
セベイさんはAFPに「20年前の家畜盗難事件をきっかけに、ポコットとイルチャムスの間で争いが起きた。人命と家畜が失われ、故郷を離れる人が続出した」と話した。
「ここはさびれ、今いる場所は戦場だった」
しかし今では、キリンのおかげで「二つの共同体の間の平和」が維持できているという。