帰国すれば最大480万円、スウェーデンの新たな移民抑制策
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【9月13日 AFP】 戦争や迫害を逃れた人々の安息の地となってきた北欧スウェーデンの右派連立政権は12日、自主帰還する移民に支給する給付金を最大35万クローナ(約480万円)に増額する計画だと明らかにした。
スウェーデンは数十年にわたり「人道大国」と見なされてきた。だが近年、移民の社会的統合を進めているにもかかわらず、多くは溶け込めていない。
反移民を掲げる極右の野党、民主党の閣外協力を受ける政権は記者会見で、2026年から自由意志に基づき出身国に帰還する移民は、最大35万クローナを受け取ることができると述べた。
ヨハン・フォシェル(Johan Forssell)移民相は最新の移民抑制策を発表する際、「われわれは移民政策におけるパラダイムシフトの真っただ中にある」と述べた。
現在、帰国する移民に支給される金額は、成人1人当たり最大1万クローナ(約14万円)、子ども1人当たり5000クローナ(約7万円)で、1家族当たり4万クローナ(約55万円)までとなっている。
この措置について移民団体にコメントを求めたが、コメントは得られていない。
欧州で帰国する移民に給付金を支給している国はスウェーデンだけではない。デンマークは1人当たり1万5000ドル(約210万円)以上、ノルウェーは約1400ドル(約20万円)、フランスは2800ドル(約40万円)、ドイツは2000ドル(約28万円)を支給している
スウェーデンは1970年代から外国に開発援助を惜しみなく行い、1990年代からは主に旧ユーゴスラビアやシリア、アフガニスタン、ソマリア、イラン、イラクなどの紛争地帯から多数の移民を受け入れてきた。
欧州移民危機のピークを迎えた2015年だけでも、スウェーデンは庇護希望者16万人を受け入れ、人口当たりで欧州連合(EU)最多となった。
スウェーデンでは、外国出身者の失業率が極めて高いために経済格差が拡大し、「揺り籠から墓場まで」と呼ばれるほど充実した社会保障制度にとって重荷となった。
欧州移民危機が転換点となり、当時の与党・社会民主党は、移民への門戸開放政策をこれ以上続けることはできないと表明。
以来、歴代政権は左右を問わず移民抑制策を講じてきた。それには、難民認定申請者の在留資格を短期滞在に限定したり、家族を呼び寄せる条件を厳格化したり、欧州連合(EU)域外出身者の就労ビザの申請に必要な収入基準を引き上げたりするなどの措置が含まれる。
ウルフ・クリステション(Ulf Kristersson)政権はさらに、薬物乱用、犯罪組織への関与、スウェーデンの価値観を脅かす発言などを行った移民の強制送還の容易化も計画している。(c)AFP/Johannes LEDEL and Pia OHLIN