【2月15日 AFP】スカンジナビア航空(SAS)が、北欧の伝統の正統性に疑問を呈する新CMを公開し、非難を浴びている。CMはサイバー攻撃やソーシャルメディアへの怒りの投稿を引き起こしたほか、制作した広告代理店に爆弾の脅迫が届く騒動にも発展した。

 CMは11日、ユーチューブ(YouTube)で公開された。動画では、ナレーションで「真にスカンディナビアのものとは?」と問い掛けた後、「何一つない……すべてがコピーだ」と返答。スウェーデン風ミートボールの起源はトルコ、デニッシュはオーストリアからデンマークに持ち込まれた、といった具合に北欧名物の起源を次々に列挙し、「私たちは祖先のバイキングから何も変わっていない。国外に旅して、気に入ったものを何でも奪って、少しだけアレンジすれば、ほら出来上がり!」と続けた。

 スウェーデンとデンマーク、ノルウェーが1946年に共同設立したSASはCMについて、「旅は私たちを豊かにする」というメッセージを伝えたかったと説明しているが、CMは北欧諸国で一部の反発を呼んだ。

 北欧諸国では2015年以降の移民大量流入により、移民の社会統合やスカンディナビア人としてのアイデンティティーをめぐる議論が白熱している。スウェーデンやデンマークでは、ポピュリスト政党や反移民政党の政治家がCMを非難し、スカンジナビア航空を今後利用しないと宣言した。

 またデンマークの首都コペンハーゲンでは13日朝、CMを制作した広告代理店に対し爆弾を仕掛けたとの脅迫メールが届いたことから、警察が同社オフィス周辺を封鎖。だが捜索で不審物は見つからず、封鎖は数時間後に解除された。

 コペンハーゲン・ビジネススクール(Copenhagen Business School)のラース・トゥーヤ・クリステンセン(Lars Thoger Christensen)教授(コミュニケーション学)は、「このCMは、どんな人でも歓迎するという政治的立場を示唆している。外国人嫌悪が起きている今、これが繊細なメッセージであることは明らかだ」とAFPに語った。

 あるツイッター(Twitter)ユーザーはスウェーデンの高校生環境活動家グレタ・トゥンベリ(Greta Thunberg)さんに言及し、「グレタがスウェーデン人の飛行機利用を減らす目的でこの『CM』を制作したのなら、上出来だ」とジョークを飛ばした。

 CMが大きな話題を呼ぶと、スカンジナビア航空は12日、CMをソーシャルメディアの公式アカウントから一時的に取り下げた。ただ同社は、反響の「パターンと量」から察するに、「オンライン攻撃があり、キャンペーンが乗っ取られた」疑いがあると述べている。(c)AFP/Camille BAS-WOHLERT