米大使、長崎の平和式典を欠席 イスラエル非招待理由に
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【8月9日 AFP】米国のラーム・エマニュエル(Rahm Emanuel)駐日大使(64)は9日、長崎市で開かれた「原爆の日」の平和祈念式典にイスラエル大使が招待されなかったことに抗議し、同式典を欠席した。
長崎はこの日、1945年8月9日の米国による原子爆弾投下から79回目の原爆の日を迎えた。第2次世界大戦中の原爆投下では、爆発後の放射線被ばくによる犠牲者も含め、広島で14万人、長崎で7万4000人が亡くなった。
エマニュエル氏は同様の理由で長崎の式典を欠席した英国のジュリア・ロングボトム(Julia Longbottom)駐日大使とイスラエルのギラッド・コーヘン(Gilad Cohen)駐日大使と共に東京・芝公園の増上寺で開かれた「長崎原爆殉難者追悼会」に参列した。
英、米、ドイツ、フランス、イタリア、欧州連合(EU)は、長崎に大使以下の外交官を派遣した。カナダとオーストラリアも同様に対応したと報じられている。
米国はジョン・ルース(John Roos)元駐日大使が2010年に広島、12年に長崎の式典に出席するまで、原爆関連の式典に出席したことはなかった。また大統領としては2016年5月にバラク・オバマ(Barack Obama)氏が初めて広島を訪問した。
長崎市の鈴木史朗(Shiro Suzuki)市長は先週、イスラエルを招待しなかったのは、パレスチナ自治区ガザ地区(Gaza Strip)での紛争をめぐる抗議デモが行われるのを避けるためで「政治的な理由」ではないと否定していた。
だが、オバマ政権で大統領首席補佐官を務めたエマニュエル氏は9日、増上寺での追悼会後に記者団に対し、「首相(日本)が出席していることを考えると、これは安全への懸念に基づくものではなく、政治的な決定だったと思う」と語った。
またイスラエルの非招待は「侵略した国と侵略の被害者である国、すなわちロシアとイスラエルを道徳的に同等に扱うに等しい」と主張した。
ロシアと同盟国のベラルーシは、ロシアによる2022年のウクライナ侵攻開始以降、長崎、広島どちらの式典にも招待されていない。
一方、米国務省のマシュー・ミラー(Matthew Miller)報道官は8日、エマニュエル大使の決定を擁護し、「この日(原爆の日)に関するわが国の立場や日本への敬意は十分知られており、大使が一つの行事に出席しないという出来事をはるかに超えるものだ」と述べた。
鈴木市長は平和宣言の中でイスラエルに直接言及はしなかったが、ウクライナとガザでの紛争を踏まえ、世界平和への懸念を表明した。
「ロシアのウクライナ侵攻に終わりが見えず、中東での武力紛争の拡大が懸念される中、これまで守られてきた重要な規範が失われるかもしれない。私たちはそんな危機的な事態に直面しているのです」 (c)AFP/Hiroshi HIYAMA