【5月15日 CNS】「70元(約1514円)以上の購入で15元(約324円)割引」「3杯で55.9元(約1209円)」

 中国の1990年代生まれの暁琦(Xiao Qi)のスターバックス(Starbucks)カードには、数多くのクーポンが入っている。スターバックスは「価格競争には興味がない」として高級路線を採用しているが、そのアプローチが微妙に変化したのではないかと注目されている。

 今年3月に中国を訪問したスターバックス創業者のハワード・シュルツ(Howard Schultz)氏は「価格競争には興味がない」と述べたが、その直後から、安売りを意味する「スターバックスにも(安売りの代名詞である)9.9元(約214円)トレンドが来たのか」と話題になった。

 中国のSNS上では「スターバックスを3元(約64円)で飲む」などの裏技が話題になっている。「こうした裏技的な割引は実はずいぶん前から行われていた」と暁琦氏は語る。スターバックスの割引クーポンは少なくとも2023年には存在していたという。

 頻繁にクーポンが出てくる背景には、中国でのスターバックスの成長鈍化がある。スターバックスの2024年度第1四半期財務報告書によると、2023年12月31日時点の世界の既存店売上高はアナリストの予想を下回った。スターバックスにとって 2番目に大きな市場である中国市場における平均客単価は9パーセント下落したが、同期間に世界の平均客単価は2%上昇している。

 これに関連して、スターバックス中国の会長兼最高経営責任者(CEO)の王静瑛(Wang Jingying)氏は「客単価下落の主な理由は、消費者の購入頻度を高めるために割引プロモーションをしているからだ」と説明している。

 高級路線はスターバックスの立ち位置だ。中国国内の高級ミルクティーブランドが相次いで値下げした2022年、スターバックスはコストを理由に値上げを進めた。トールサイズのアイスコーヒーは1杯30元(約649円)に値上がりした。だが、コーヒーがニッチなものから大衆的で人気のある飲み物へと移行するにつれて、中国の新興ローカルブランドとの間の競争は激化している。

 スターバックスも国内のオンラインチャンネルを開設するなど、より多様なマーケティングに動き始めている。

 中国のコーヒー市場は2023年に6178億元(13兆3696億円)に達し、2025年には1兆元(約21兆6406億円)に達すると予想されている。中国市場を重視してきたスターバックスは、地方都市を次のターゲットとして選んだようだ。

 スターバックス中国CEOの王氏は「スターバックスは中国の県(日本の町村に相当)レベル以上の約3000都市のうち857都市にしか参入していない」と述べたことがある。県レベルの市場におけるスターバックスの新規店舗の収益性は、大都市よりも優れているとされ、スターバックスは県レベルの市場に参入していく予定だという。

 中国の食品業界アナリスト、朱丹蓬(Zhu Danpeng)氏は「スターバックスは多くの割引を打ち出しているが、高級路線のブランド傾向は変わらないと考えている。しかし、県レベルの市場に可能性を見い出しているのはスターバックスだけではなく、中国の国産コーヒーチェーンも拡大を加速している。競争の激しい市場でシェアを争えるかはまだ不明だ」と話している。(c)CNS/JCM/AFPBB News