米大の少数派入学優遇制度、廃止の動き
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【7月25日 AFP】米国の大学には「多様性、公正性、包摂性(DEI)プログラム」と呼ばれる、人種的少数派の学生にチャンスを与える入学優遇制度がある。だが現在、この制度をめぐり社会を分断する議論が広がっており、制度を制限したり禁止したりする州が増えている。
左派は根深い格差の犠牲者である少数派学生を優遇すべきだと言い、右派は、肌の色ではなく、個々人の長所を評価すべきだと主張している。
サウスカロライナ州議会のジョーダン・ペース(Jordan Pace)下院議員(共和党)は「現代の差別によって過去の差別問題を解決するという考え方は本質的に間違っている」と語った。
米国は「超実力主義社会」だとし、「性別、人種、身長など変えることのできない個性に基づいて人を判断するという考え方は認められない」と主張した。
多くの大学はDEIを掲げ、入学選考に当たり人種的少数派の学生に優遇枠を設けている。長年続く格差の是正を目的に、特に黒人、ヒスパニック、ネーティブアメリカン(先住民)の子女が対象となっている。
昨年6月、保守派が多数派を占める連邦最高裁は、特定の人種を対象とした、大学入学選考における優遇措置を廃止する判断を下した。1960年代の公民権運動をきっかけに導入された制度が失われたのだ。
すでにフロリダなど約10州でDEI制度は廃止されており、ペース氏は、サウスカロライナ州も後に続くよう呼び掛けている。
ケンタッキー州のルイビル大学(University of Louisville)で汎アフリカ研究を専門に教えるリッキー・ジョーンズ(Ricky Jones)教授によると、DEI制度の「主要対象はどこの地域でも黒人」だと話す。
同大の学生で、一族で初めて大学進学を果たしたというカーリー・リーブスさん(19)によると、同大に通う人種的少数派の学生は「100%DEIのおかげ」で入学できている。黒人向けの奨学金などの恩恵もある。
ケンタッキー州議会は3月15日、こうした優遇制度を制限する法案を可決。テキサス、アラバマ、アイダホの3州でも同様の州法が施行されている。
これを受け、リーブスさんは仲間と共にキャンパスで抗議デモを行った。
「学生たちに伝えるのが私の責務だと思った。『みんな、あの人たちは私たちを文字通りキャンパスから排除するつもりだよ、何か行動しなければ』って」
ジョーンズ教授は、新州法は「自治体、州、国のレベルで人種問題の時計の針を戻す」ようなものだと指摘した。
やがては黒人学生がフロリダやテキサスといった州を避けるようになり、「非常に危険な忘却が起きるだろう」と警鐘を鳴らした。(c)AFP/Ulysse BELLIER