【4月19日 AFP】米国体操連盟(USA Gymnastics)のチーム医師だったラリー・ナサール(Larry Nassar)受刑者の性的虐待行為をめぐり、米連邦捜査局(FBI)が捜査対応を誤ったとして損害賠償を請求されていた件で、同司法局が和解金1億ドル(約154億円)を支払う見通しだと、米紙ウォールストリート・ジャーナルが18日に報じた。

 2017年から18年にかけて行われた裁判で、ナサール受刑者は選手ら数百人に性的暴行を加えていた罪で有罪判決を言い渡され、現在禁錮175年の刑に服している。報道によると、和解金は同受刑者の被害者100人に支払われるという。

 体操女子の五輪金メダルストであるシモーネ・バイルス(Simone Biles)選手をはじめ、元選手のアレクサンドラ・レイズマン(Alexandra Raisman)氏やマッケイラ・マロニー(McKayla Maroney)氏ら被害者は2022年6月、ナサール受刑者が性的虐待行為をしていたとの通報に対してFBIが適切な対応を誤ったとして、10億ドル(約1540億円)の損害賠償を求める訴えを起こしていた。

 この件は数か月前に和解が成立しており、その内容に関して被害者側は基本合意しているものの、まだ最終決定ではないという。

 司法省監察官の報告書を引用した同紙の報道では、ナサール受刑者の不正行為に関して2015年に米体操連盟が行ったFBIのインディアナポリス(Indianapolis)支局への通報に対する対応には、複数の誤りがあったと伝えられている。

 この対応ミスにより、ナサール受刑者は2016年に逮捕されるまで数十人もの被害者に性的暴行を加え続けていた。ナサール受刑者は、連盟やミシガン州立大学(Michigan State University)で20年以上にわたり勤務していた。

 被害者側は2021年、連盟が総額3億8000万ドル(約587億円)を支払うことで和解に合意。これは性的虐待の被害者が受け取る和解金としては、過去最高レベルの額となった。連盟はナサール受刑者の不正行為疑惑をめぐる大きな波が押し寄せたため、18年に破産を申請した。

 また、2018年にはミシガン州立大学が、ナサール受刑者の被害者数百人と5億ドル(約772億円)で和解が成立した。

 ナサール受刑者は昨年7月、服役しているフロリダ州の刑務所で他の受刑者に刺されたが、そのけがは回復している。(c)AFP