【1月28日 CGTN Japanese】今年の北京市高級人民法院(裁判所)の活動報告では、中国のインスタントメッセンジャーアプリ「微信(ウィーチャット)」などのSNSを利用した業務による「見えない残業」案件が取り上げられています。これは中国の裁判文書で「見えない残業」に関するトラブルについて判断を下した初の事例だということです。ネットワーク時代の「見えない残業」現象について、裁判所は退社後にSNSを利用して実質的な役務を提供することは法に基づく残業であると認定し、労働者の「オフライン休憩権」を保護したとみられています。

 この案件は、労働者の李さんが所属する会社に対して2019年12月21日から2020年12月11日までの残業代を支払うべきだと訴えたものです。李さんが主張した時間外労働の内容とは、退社後に、ウィーチャットや「釘釘(ディントーク、中国のアリババグループが開発した企業用インスタントメッセンジャー)」などのSNSアプリを通じて取引先や同僚とコミュニケーションをとるために費やした労力です。しかし会社は、これは残業には当たらないと主張しました。

 これに対して、北京市第三中級人民法院は、李さんが一部の平日の退社後の時間や休日にSNSを利用して行った業務は、簡単なコミュニケーションの範疇を超えたものであり、その業務内容は周期的また固定的な特徴を有しており、一時的、偶発的な一般的コミュニケーションとは異なり、雇用主による雇用管理の特徴を反映したもので、残業とみなすべきであると判断し、雇用主に3万元(約60万円)の残業代を支払うよう命じました。

 この判決は、「見えない残業」問題での認定基準として「業務の実質性」と「拘束時間の明確性」の原則を確立させたといえます。デジタル時代における労働形態の変化に対応しており、労働者の合法的権益の効果的な保護につながっていくことがと期待されています。(c)CGTN Japanese/AFPBB News