【12月15日 AFP】フランス・パリ郊外に新設される地下鉄駅に、1991年に死去したシンガー・ソングライター、セルジュ・ゲンズブール(Serge Gainsbourg)さんの名を冠する計画について、15日までに1万筆を超える反対署名が集まった。ゲンズブールさんは、ミソジニー(女性嫌悪)と近親姦を擁護していたと非難されている。

 パリ地下鉄を運営するパリ交通公団(RATP)は2016年、11号線の延伸工事を開始。2024年の開通を予定している。

 パリ郊外の町レリラ(Les Lilas)の自治体は、新駅の一つにゲンズブールさんの名前を付けるとしており、今年亡くなった元パートナーのジェーン・バーキン(Jane Birkin)さんもこの案を支持していた。

 だが、「公務員でフェミニストの活動家」を名乗る女性が先月、署名サイト「change.org」に、この計画に反対する署名ページを立ち上げた。ゲンズブールさんは「暴力的な男で、悪名高いミソジニスト、そして近親姦推進者」だったと主張している。

 署名数は14日昼までに1万600筆を超えた。13日には半数以下だったが、その後急激に増えた。

 駅の命名は、ゲンズブールさんが1959年に11号線の駅の職員について歌った「リラの門の切符切り(The Les Lilas ticket puncher)」がヒットしたことにちなんでいる。

 ゲンズブールさんの歌の多くは、婉曲(えんきょく)的もしくは直接的な性的表現がちりばめられており、たびたび物議を醸していた。

 特に問題視する声が多いのは、現在女優・歌手として活躍する娘シャルロット・ゲンズブール(Charlotte Gainsbourg)さんとの近親姦的な空想を好んでいたとされる点だ。

 1984年に発表した、当時13歳だったシャルロットさんとデュエットした「レモン・インセスト(Lemon Incest)」は大いに物議を醸した。ゲンズブールさんは近親姦に及んだことはないと主張していた。

 署名ページには「それでもこの作品は、近親姦は愛にあふれ、官能的で望ましい関係だという社会的空気の形成に寄与した」とある。

 また、ゲンズブールさんが「女性に対して暴力的」で「小児性愛者的、さらには近親姦的な傾向」があったことは「広く知られている」と主張。バーキンさんも回顧録でゲンズブールさんに暴力を振るわれたことがあったと明かしているとしている。

 仏政府が設置した「子どもに対する近親相姦(そうかん)と性的暴力に関する独立委員会(CIIVISE)」によると、フランスでは毎年16万人の子どもが性的暴力の被害に遭っている。また、子どもの頃に性的虐待を受けたとする成人は550万人に上っている。(c)AFP