【11月14日 東方新報】中国政府金融当局は、今年第4四半期に1兆元(約20兆7906億円)の国債追加発行を決定した。この国債は全て地方政府への振替支払いに充て、災害復旧、復興支援、防災、被害軽減、救援などの不足を補い、中国全体の自然災害に対する抵抗力の整備に用いられる。

 追加発行される国債1兆元のうち半額の5000億元(約10兆3953億円)は今年使用され、残りの5000億元は来年度予算に組み込まれる予定だ。国家財政部の説明によると、この資金は主に八つの方面に支出されるという。災害発生後の復旧・再建事業、重点地区の洪水対策・治水事業、自然災害応急能力向上事業、その他重点区域の洪水対策工事、かんがい区域の建設・改造と水・土の流失対策工事、都市排水・浸水防止能力向上行動、重点的な自然災害総合防災システム構築事業、東北地区および首都経済圏を構成する北京市/天津市(Tianjin)/河北省(Hebei)の被災地区における管理水準の高い農地建設が、その対象8項目だ。

「全国各地が防災/災害軽減/救援方面の力量不足とぜい弱さが露呈したことが今回の国債追加発行の原因だ」、経済観察網(China Economic Observation Network)の取材に対して、政策関係者はこのように話した。

 地方政府債券や政府投資基金などの研究が専門の「中財-安融地方財政投融資研究所」の温来成(Wen Laicheng)執行所長は、「地方財政支出の面で見ると、中国北部と東北地方の水害が重大で、比較的多額の復興資金が必要だ。年内に支出される5000億元は地方経済支援の面で一定のけん引力が期待できる」と説明する。

 今回の国債発行は「特別国債」という形で、中央政府の財政に赤字計上されるものだ。この点で、1998年、1999年、2000年の8月にそれぞれ発行された基盤インフラ整備と基本建設用の1000億元(約2兆791億円)、600億元(約1兆2474億円)、500億元(約1兆395億円)の10年物「長期建設国債」と共通性がある。

 この国債発行後、中央政府の財政赤字は3兆1600億元(約65兆6983億円)から4兆1600億元(約86兆4889億円)に増え、赤字率は3パーセントから3.8パーセント程度まで増加する。21年の中央政府財政赤字率が3.2パーセント前後で調整されていたのに対し、今年の赤字率は近年で最大となる見込みだ。

 温氏は「欧州連合(EU)の安定成長協定(Stability and Growth Pact)にあるGDPの3パーセント以内の財政赤字率という規定はあくまでも目安で、特定年度では超過もあり得るとしている。現在中国が直面している経済的な圧力から見て、国債発行を通じて災害抵抗力や救助能力を高めることは、経済成長にとって現実的な選択肢の一つだ。またEUと同様に、中国も赤字率3パーセント以下を長年維持しており、3パーセントが潜在的な目安にはなっている」と説明している。

 マクロ経済、投資研究などの情報配信ウェブサイト「興業研究(CIB Research)」が、1兆元国債正式決定前の10月13日時点で試算した数値によると、資金が使用されるタイミングによって、二つのうちのどちらかの経済効果を予測していた。

「もし1兆元が年内に使用されれば、今年の基本建設投資の成長率を4.7ポイント引き上げる効果があり、もし来年度に使用されるならば、今年通期の基本建設投資の成長率が今年8月末のレベルを維持すると仮定した上で、来年度の基本建設投資の成長率を4.3ポイント引き上げる効果がある」というのが、その二つの経済効果だ。(c)東方新報/AFPBB News