■アフガンやチェチェンからの帰還兵の苦しみを繰り返したくない

 ここ数か月、ロシアのメディアは前線からの帰還兵が関与する事件の増加を報じている。組合のオレグ・パンチュリン代表(32)は、「問題のある個人は、コミュニティーの問題になるだろう」との認識を示し、「だからこそ一人一人をケアしなければならない」と述べた。

 パンチュリン氏も、第71自動車化狙撃旅団の副司令官としてウクライナ紛争に従軍し、7月にウクライナ側の反攻拠点である南部ザポリージャ(Zaporizhzhia)州ロボティネ(Robotyne)で負傷。今は松葉づえで生活している。

「われわれが(元戦闘員を)考慮しなければ、体制に対して怒りを抱くようになる。彼らを大事にしているのだと示す必要がある」

 政府は帰還兵に対し、金銭的・物質的な援助は行っているが、精神科医や弁護士、ソーシャルワーカーなどは不足していると、パンチュリン氏は指摘した。

 帰還兵組合は「善良な人々(Dobrye Lyudi)」、「ロシアの将校(Officers of Russia)」という二つのNGOとともに帰還兵にセラピーを提供し、社会生活に復帰させるための独自プログラムを立ち上げた。

 ロシア軍の特殊部隊と警察を経て、昨年ワグネルに加入したエルヌール・ヒスマトゥリン(30)さんも、帰還兵組合のメンバーだ。

 バシコルトスタン(Bashkiria)共和国出身のヒスマトゥリンさんもバフムートで戦い、ウクライナの砲撃を受けて6回も脳振とうを起こした。紛争地域からの撤退直後は話せなくなり、心的外傷後ストレス障害(PTSD)に苦しんだ。

 帰国後、2か月の心理カウンセリングを受け、ようやく普通に話せるようになった。以来、他の帰還兵の支援に「自分の生きる意味」を見いだしている。

 ヒスマトゥリンさんは、紛争を無視して「自分の小さな世界」に生きることを選ぶ多くのロシア人の浅はかさを残念に思うと語った。

 今、ヒスマトゥリンさんは戦場で重度の脳損傷を受け、半死半生で発見されたある兵士のために治療費を集めようとしている。この元兵士はモスクワ近郊のホスピスで寝たきりで、口もきけず、孤独な状態にある。

 AFPが取材した帰還兵は皆、アフガニスタンやチェチェン(Chechen)での紛争後に帰還した何千人もの元兵士が、支援もなく放置された苦しみを繰り返したくないと語った。

 ワグネル戦闘員としてやはりバフムートで戦ったアレクサンダー・ボセノフさんは、ウクライナでの戦闘の激しさは第2次世界大戦(World War II)に匹敵すると思うと語った。

 前線から戻り、これからは警備業界で働くか、新兵訓練に携わることになるのではないかと話したボセノフさんは、「迫撃砲を含め、あらゆる種類の武器を撃つことができる」と言って顔をほころばせた。

 それから、狙撃兵の銃弾がかすめた痕だという、頭に残った白い傷を見せた。(c)AFP