【8月15日 CGTN Japanese】最近、中国では1件の労働争議が注目を集めています。李さんは2019年に北京のあるIT会社に入社し、製品管理の業務を担当しています。労働契約の期間は3年間で、期間中、李さんはフレックスタイム制で働くと決められていました。しかし、入社後、残業の問題で労働争議が起きました。李さんは労働仲裁を申し立て、会社に500時間分の残業代、計20万3200元(約406万4163円)の支払いを要求しました。労働仲裁委員会は李さんの申し立てを却下したため、李さんは改めて裁判所に提訴しました。一審は李さんの主張を退けましたが、第二審では残業が認められ、会社側に李さんに3万元(約60万円)の残業代を支払うよう命じました。

 二審判決では、時間外労働を認定するための二大要件を確認しました。一つは労働時間制の導入で、1日の労働時間が8時間以内、週当たりの平均労働時間が44時間以内であること、もう一つは、労働者が実際の仕事内容を申告することです。

 李さんの件について、二審の裁判所が会社側の主張を認めなかったのは、会社と労働者がフレックスタイム制の労働契約を結んでいても、これは労働を管理する行政部門の承認を得ていないため、依然として労働時間制に基づいて判断することとなり、労働者の退勤後の勤務もおのずと残業の範囲にカウントされることになったのです。労働者が申告した実際の仕事内容を判断の基準にすることは労働の本質を捉えているほか、労働立法の精神にもかなっています。

 もちろん、すべての「在宅勤務」や、「スマホでの仕事」が残業になるわけではありません。二審判決では、スマホでのやりとりのうち、簡単な連絡の範囲を超えた部分が残業になると明確にしています。労働者が自宅でウィーチャットなどのアプリを利用して勤務していても、それが情報伝達などの簡単な内容で、労働の価値を反映できないものであれば残業にはなりません。こういった認定は労働争議における会社側の合法的な権益に配慮した保護措置だとみられます。(c)CGTN Japanese/AFPBB News