【8月12日 東方新報】秋入学の中国では夏休みのこの時期、有名大学のキャンパスを見学しようとする小中高校生やその親が全国から訪れる。ところが最近、最高峰の北京大学(Peking University)や清華大学(Tsinghua University)をめぐり、「入場料」を取ろうとしたり詐欺まがいのツアーを企画したりするトラブルが目立っている。

 中国は今も激しい受験競争が続き、「合格した大学によって就職から結婚までの人生が決まる」という意識が根強い。特に、北京市の西北に位置する北京大学と、隣接する清華大学はピラミッドの頂点に君臨する。大学キャンパスは通常なら自由に見学できるが、北京大学と清華大学は見学者が多いため、事前登録制を取っている。学生や保護者らは人気コンサートのチケットを取るように、ホームページやSNSを通じて必死に申し込みをするが、予約は困難な状態だ。

 北京大学は7月24日、「大学OBが違反行為をした」と発表した。大学OBが勝手に「北京大学・実りの夏季講習講座」と銘打ち、1人当たり1万800元(約21万5104円)の料金で参加者を募集し、139人から総額約150万元(約2988万円)を集めていたという。OBには家族や友人ら数人をキャンパスに招待できる枠があり、OB46人が結託して参加者を募集していた。大学側はこのOBらの招待枠を取り消した。

 また、最近は一部の旅行業者が「北京大学・清華大学見学ツアー」「名門大学出身者が案内」とうたった企画を立てている。しかし実際にツアーに参加すると、北京大学の校門前で記念写真を撮影するだけ、清華大学付属の博物館を鑑賞するだけという内容が多く、「名門大学出身者」も証明書を持っていないため、「だまされた」と憤る参加者が多い。「旅行者の権利を定めた旅行法や民事契約を定めた民法に違反している」として取り締まりを求める声が出ている。

 中国では過熱する受験戦争を抑制するため、2021年に「学校での宿題を減らし、塾通いを減らす」という「双減」政策を打ち出した。小中学校では学年ごとに宿題の上限を設け、学習塾については「民間の塾は非営利団体にする」「長期講習をしない」などの厳しい条件を付けた。事実上の「塾廃止令」となっており、多くの学習塾が閉鎖された。

 ただ、「一流大学に入って、人生の勝者になりたい」と思う保護者とその子どもたちの受験熱がそれで収まるわけではない。北京大学や清華大学のキャンパスに立ち、「いずれこの大学に通うんだ」と決意を固めるのは、最高のモチベーションとなる。根本的には学歴偏重社会の是正が必要という話だが、そうした熱意を大人たちが悪用し、「社会勉強」とばかりに「授業料」をせしめる行為は許されない。(c)東方新報/AFPBB News