【8月5日 東方新報】近年中国では多くの家庭で育児の考え方が変化し、託児施設の需要が継続的に増加している。国の支援策もあり、託児業はスピード発展の時期に入った。託児関係の組織は、まるで水が噴き出るように増加している。国家衛生健康委員会の「託児機構情報公示プラットフォーム」に登録している託児機構は、2023年6月現在で2万6000社に上る。

 公開された資料によると、託児施設には全日制、半日制、時間制、臨時預かりなどさまざまな形式があるが、大半は幼稚園内に設けられた託児班や早期教育組織が業容転換したものだという。

「全面二孩政策(二人っ子政策)」実施後、乳幼児の託児問題が顕著になってきた。多くの家庭が3歳以下の子どもを託児施設に預けることを望んでいる。国家衛生健康委員会のデータによると、現在中国の3歳以下の乳幼児は約4000万人、乳幼児を抱える家庭の3割以上が託児施設を求めているが、入所率はわずか5.5パーセント程度にとどまっている。人口千人当たりの託児施設数は2.5か所で、五か年計画の目標数4.5か所にはほど遠い。

 託児料金もおのずから高くなる。北京市にある5か所の民間託児施設への聞き取り調査によると、ひと月最高1万6000元(約32万円)以上、最低は6800元(約13万5476円)、残りの3か所は7000元(約14万円)から9000元(約18万円)の範囲だった。

 一方、10世帯の家庭からの聞き込みでは、子どもをまだ預けていない家庭の希望料金はひと月3000元(約6万円)以内、すでに子どもを預けている家庭の多くは5000元(約10万円)を超えない範囲を望んでいる。

 北京市海淀区(Haidian)に住む周(Zhou)さんは中学校の教師だが、仕事が忙しくて子どもの世話をする暇がない。「託児所に預けようと思ったが、ちょっと良い施設だと料金が高すぎて、私のひと月の給料全部を払っても足りません。仕方なく老父母に世話を頼みました」と嘆く。

 一方、託児施設の側にも悩みがある。

 北京市朝陽区(Chaoyang)のある民間託児園の責任者は「行政規則で、託児施設は3階建て以下と決められているが、これでは家賃が高くなる。そのうえ人件費が高い。例えば18か月以下の幼児を預かる場合、保育教諭と幼児の人数比は1対2、18か月以上では1対3、さらに教諭の資格訓練が必要で、1名の教諭1週間でおよそ5500元(約11万円)かかる」と話す。

 また同区の別の託児センターは「1年間のコストは300万元(約5977万円)以上で、大部分が家賃と人件費だ。子どもが小さければ小さいほど専門性やその他の資質の要求が高くなるので大変だ」と悩みを語る。

 山東省(Shandong)青島市(Qingdao)の託児センターの責任者の話によると、毎月の託児料は1人1880元(約3万7455円)だが、家賃や人件費で毎年100万元(約1992万円)近い出費があり、収入が支出に追いつかない状態だという。

 国務院発展研究センター社会と文化発展研究部が、関係の研究機関や大学とともに各地の託児業協会と業界大手企業に委託したオンラインアンケートによると、託児組織のうち約12パーセントは自身で建物を保有し、それ以外の託児組織の約46パーセントは商業用建物を賃借しその1か月の平均賃料は3万2558元(約65万円)、約5パーセントは住民居住区の公共スペースを借り平均賃料は1万6163元(約32万円)、約18パーセントは個人所有の建物を借り平均賃料は2万5762元(約51万円)、約5パーセントは国有資産の建物を借り平均賃料は4万6615元(約93万円)だった。

 これ以外に教育用や戸外活動用の設備、備品、監視警報設備などに平均66万元(約1314万円)の費用が掛かっていた。

 投資回収の周期について、約36パーセントが5年以上かかる、約32パーセントが3年から5年と回答した。

 国家発展改革委員会など政府関係機関16部門が連名で22年8月に公布した『養老託児サービス業の困難を支援する若干の政策措置』には、家賃や税金の減免優遇、社会保険のサポートなど26条にわたる支援措置が示されている。政府も乳幼児の保育問題には関心を払い大きな支援をしていく方針だ。

 それでも多くの専門家が「全面的に体系化された託児サービスの確立にはまだ一定の時間を要する」と推測している。

 今のところ都市の託児組織の運営はコストが高く、投資回収が遅く、実効性のあるサポートも少なく、非常時に直面した際のリスク抵抗力がぜい弱だというようなさまざまな問題があると指摘する。(c)東方新報/AFPBB News