【8月3日 Xinhua News】中国で7月8日に公開された国産アニメ映画「長安三万里」の興行収入が同月30日時点で15億元(1元=約20円)を超え、夏休みの映画ランキングで3位に入った。複数の映画関係者は、今年の夏休み期間に観客は良好な鑑賞体験を楽しみ、詩句や神話などの中国文化を映画という巨大な開放空間で鑑賞できると胸を張った。

 作品は唐代の詩人、高適(こう・せき)の視点から始まり、李白(り・はく)との数十年にわたる深い友情のほか、杜甫(と・ほ)や王維(おう・い)、王昌齢(おう・しょうれい)など同時代の有名詩人の雄大な志や、人生の理想に対するたゆまぬ追求を描いている。

 謝君偉(しゃ・くんい)監督は「中国人は幼い頃から唐詩の朗読や暗唱をしている。偉大な詩人の生涯をアニメで生き生きと再現し、逆境に直面しても理想を追い続ける彼らの精神を伝えたい」と話した。

 製作会社「追光動画」総裁で同作の監修を務めた于洲(う・しゅう)氏は新華社の取材に対し「作品の最も成功したところは、千年前の唐詩を生かしたことだ。唐の詩人を観客のすぐ近く、または心の中に招き入れ、中国の文化と歴史に対する関心と愛着を深めた」と分析した。

 観客からは「うれしい驚きだった。想像していた唐代の『詩人の宇宙』の重厚感が表現され、なじみのある詩人らがスクリーンによみがえった」「深さや広さ、風格がある。中国人が製作すべきアニメ映画だ」などのコメントが寄せられた。主要製作陣は作品を通じ、千年以上受け継がれてきた唐詩の独特の魅力や中国の優れた伝統文化を感じてほしいとの思いを表明した。

 中国の伝統文化を題材にした多数のアニメ映画がここ数年、口コミと興行収入の両方で好結果を残している。興行収入50億元超の「ナタ魔童降臨(原題:哪吒之魔童降世)」と16億元超の「ジャン・ズーヤー:神々の伝説(原題:姜子牙)」は、中国の古典小説「封神演義」を基にしている。「西遊記ヒーロー・イズ・バック(原題:西遊記之大聖帰来)」は明代の小説「西遊記」、「白蛇:縁起」は民間伝説「白蛇伝」に材を取り、「紅き大魚の伝説(原題:大魚海棠)」は「荘子」の「逍遥遊篇」に着想を得た。海外で多くのファンを獲得した作品も少なくない。

 一方、原典の改変には反対意見もある。「長安三万里」は上映時間が168分と長く、史実だけでなく、多くの想像も加えている。一部の詩歌は制作背景が再現されず、エンドロール後の特典映像になっていると考える人もいる。

 于氏は「作品が直面している課題は、唐詩の情緒と品格をアニメ映画の音声と光でいかに表現するかだ。製作期間と予算の制限があっても、改善の余地はある」との考えを示した。国産アニメ映画が直面する共通の問題と言えるかもしれない。物語にさらに磨きをかけ、表現力と叙情性の絶妙なバランスを把握できるかどうか、製作者の知恵が試されている。

 同氏によれば、中国の伝統文化は映画・テレビ番組制作に役立つ宝を秘めているという。制作者は真剣に学んだ上で、旧習にとらわれず正道を守り、現在の時代精神と結び付け、中華の文脈と中国人の精神を受け継ぐ作品を生み出し、多くの観客と思想や情感の共鳴、高揚を起こす必要がある。チームは現在、日本を含む海外での配給を積極的に計画している。

 現代の需要に適応し続ける中国のアニメ映画は、不断の革新の中で独自のスタイルと精神的中核を探し当て、より幅広い観客を獲得できるだろう。(c)Xinhua News/AFPBB News