【7月27日 東方新報】猛暑の真夏を迎え、中国では「夜間経済(ナイトエコノミー)」が都市部の消費をけん引している。

 夜間経済とは夜6時から翌朝6時までの経済活動を指す。地元グルメや土産店が集まった「夜市」の開催、美術館や博物館の夜間営業、ディナー、ショッピング、舞台、書店の深夜営業、夜間のデリバリー、ナイトクルーズなど幅広い。

 北京市では、週末や祝日に万里の長城(Great Wall of China)・八達嶺(Badaling)を夜間開放し、ライトアップされた万里の長城を楽しむ「夜長城」イベントを実施。昨夏には「北京消費シーズン・夜の首都2022」キャンペーンを始めて総額1億元(約19億7107万円)の飲食クーポン券を配布し、夜間の飲食注文量が全体の48%に達した。

 上海市では今年6月以降、宝山区(Baoshan)の大場鎮(Dachang)や羅店鎮(Luodian)などで夜市を始めた。浦東新区(Pudong New Area)の「上海野生動物園」では7月1日から8月末にかけて開園時間を午後8時まで延長。トラやヒョウなど夜行性の動物の動く姿を見ることができる。

 湖北省(Hubei)武漢市(Wuhan)はライトアップショーやグルメイベント、ビール祭り、音楽フェスティバルなどを開催。重慶市(Chongqing)も旧市街地に夜市を開設し、少数民族のファッションショーなどのイベントを行っている。甘粛省(Gansu)蘭州市(Lanzhou)はシルクロードにまつわるグルメや歌、踊り、ファッションをナイトイベントに取り入れている。

 河南省(Henan)鄭州市(Zhengzhou)は6月1日から、午後8時以降に地下鉄を利用する際、ICカードなどキャッシュレス決済での運賃をわずか1分(1元の100分の1、約0.2円弱)に減額するサービスを始めた。夜間の買い物やグルメ、観光を後押しする取り組みだ。浙江省(Zhejiang)寧波市(Ningbo)では、平日の午後8時以降と土日祝日の終日、地下鉄の運賃を無料化するサービスを行った。

 7月に入って全国の夜間店内飲食の注文量は前月比で19%増加し、成長率は昼間を上回った。日用品、生鮮食品、雑貨などのデリバリーも夜間注文量が増加している。特に「90後(1990年代生まれ)」や「00後(2000年代生まれ)」の若者層の注文が多いという。

 もともと夜間経済は中央政府も奨励していた。2019年8月に発表した消費刺激策の中で「夜間消費の活性化」を提唱。夜間経済により内需の拡大、市場の活性化、雇用創出などを期待していた。2020年から始まったコロナ禍により中断を余儀なくされていたが、昨年から各地で夜間経済の施策が徐々に再開していた。

 調査会社の艾媒諮詢(iiMedia Research)は、「中国の夜間経済の規模は今年、40兆元(約788兆円)を突破する」と予測。コロナ禍以前の日常を取り戻そうとする市民の消費意欲を追い風に、夜間経済は成長を続けている。(c)東方新報/AFPBB News