【7月20日 東方新報】中国が巨大経済圏「一帯一路(Belt and Road)」を提唱してから今年で10年。これまで中国は152か国、32の国際機関と200以上の協力文書に調印し、一帯一路を広げている。その原動力の一つとなっているのが、世界に散らばる中国系ビジネスマン、いわゆる華僑・華人たちだ。

「一帯一路」10周年を記念するシンポジウムが四川省(Sichuan)成都市(Chengdu)で6月16日に開催され、一帯一路沿線の50以上の国と地域から200人以上の華僑・華人ビジネスマンと、華僑団体である「中国華僑総会」の代表が参加した。

 中華全国帰国華僑連合会顧問で前副会長の王永楽(Wang Yongle)氏は、開幕式で「一帯一路の沿線国・地域には4000万人以上の華僑がいる。彼らは成熟したビジネスネットワークを持っており、現地の法律やルール、文化習慣にも精通している。まさに一帯一路において欠かすことができない存在だ」とスピーチした。

 華僑・華人とは、中国本土にルーツを持ち、外国に移住した後も、中国人のアイデンティティーを失わずに暮らしている中国系移民のことだ。特に大切にするのが「華僑三宝」と呼ばれる華字紙と華語学校、それらを支える同郷会館である。

 一定規模の華僑・華人が暮らすチャイナ・タウンには、漢字でニュースが読める華字紙や華文学校があり、日本なら県人会にあたる同郷会館が存在する。「同郷会館」という響きには、その身一つで外国にたどり着いても何とか同胞たちの助けで暮らしていけるという安心感がある。

 比較的規模が大きい同郷会館には、福建省(Fujian)、潮州市(Chaozhou)、広東省(Guangdong)、海南省(Hainan)、客家(はっか)などがある。福建省出身者が8~9割を占めるフィリピンや、客家が大半を占めるシンガポールなど地域によって特徴は異なる。各会館は各国の中華総商会の傘下組織になっていることが多く、各国の中華総商会が参加する世界華商大会も1991年から2年に一度開催されている。直近では6月25日にタイ・バンコクで第16回大会が開催され、50数か国・地域から3000余りの華僑・華人ビジネスマンが参加したが、ここでも一帯一路は新たなビジネスチャンスとして話し合われた。

 四川省成都でのシンポジウムでは、一帯一路関連プロジェクト計11件(投資総額153億元<約2957億円>)の調印式も行われた。同時に、四川省の五つの金融機関が「華僑への金融支援」に関する協力協定に調印している。華僑・華人は融資などのサポートが受けられる。

 祖国からのラブコールを目の当たりにした華僑・華人ビジネスマンの中から、「故郷へ錦を飾りたい」と決断する同胞がどれぐらい出てくるか。一帯一路を安定軌道に乗せるためには、世界に散らばる4000万人の華僑・華人の動向もカギになりそうだ。(c)東方新報/AFPBB News