中国で「農村NBA」と「農村プレミアリーグ」が爆発的人気
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【7月21日 東方新報】中国の農村で住民がつくる「村バスケ」や「村サッカー」が、プロスポーツのような人気を集めている。バスケットボールは米国のプロバスケットボール(NBA)や中国バスケットボール協会(CBA)にちなんで「村BA」と呼ばれ、サッカーはイングランドプレミアリーグや中国スーパーリーグ(超級)にあやかって「村超」と呼ばれている。
村BAは昨年、中国南東部の貴州省(Guizhou)黔東南ミャオ族トン族自治州(Qiandongnan Miao and Dong Autonomous Prefecture)台江県(Taijian)台盤村から全国に「バズる」ようになった。農民たちが「おらが村」のサッカーチームを結成。山奥にある人口わずか1200人の村が、インターネットを通じて全国に名をとどろかせるようになった。
今年3月27日には台盤村で村BA優勝決定戦が行われ、2万人が観戦。黔東南ミャオ族トン族自治州代表チームが同じ貴州省の遵義市(Zunyi)代表チームを68対65で下し、優勝を決めた。
村BAは近年、貴州省のほか寧夏回族自治区(Ningxia Hui Autonomous Region)や甘粛省(Gansu)、河南省(Henan)など全国各地で行われている。もちろんバスケのレベルはプロとは隔たりがあるが、「村の誇り」をかけてプレーする姿や、きらびやかな民族衣装をまとった少数民族の歌や踊りなど地元色あふれるパフォーマンス、家から持ってきた鍋やタライをたたいて応援する観客、そして勝ったチームには牛や羊、豚、スイカが賞品として贈られるなど、活力あふれる情景が人気を集めている。
6月下旬から新たな村BA大会が始まり、甘粛省臨夏回族自治州(Linxia Hui Autonomous Prefecture)の農民チームが約1500キロ離れた台盤村に遠征し、黔東南ミャオ族トン族自治州チームと対戦。台江県の住民や全国各地から来たサポーターら約1万人が観戦したほか、各地のファン約1000万人がインターネットを通じてゲームを楽しんだ。
黔東南ミャオ族トン族自治州の榕江県(Rongjiang)では、サッカーの「村超」が盛り上がっている。年齢や職業に制限はなく、約20チームが毎週金・土・日曜日に1日3~4試合を開催。農民や建設労働者、トラック運転手、学生など10代半ばから40歳過ぎまでの村民が選手となり、夕暮れ時から午前0時ごろまで、1試合ごとに1万人以上の観客が集まる盛況ぶりだ。審判や運営スタッフはボランティアが務める。
3か月にわたる村超リーグは5月に始まり、榕江県を訪れた観光客の数は42万人、観光収入は計1億3000万元(約25億2559万円)を超えている。サッカー場周辺はご当地グルメの屋台が並び、街全体がお祭り騒ぎのようになっている。
村BAや村超が盛り上がる地域の多くは、中国内の経済的後進地域。スポーツのプロチームは都市部に集中し、縁遠い存在だ。一方で中国ではバスケやサッカーの人気は高く、比較的整備がしやすいバスケのコートやサッカー場は各地にある。バスケやサッカーに自信のある住民が多いことから、村BAや村超が誕生した。
では、その他地域の市民までアマチュアの試合にわざわざ遠方から駆けつけたり、インターネットで観戦したりするのはなぜか。中国メディアは「中国のバスケやサッカーのプロ選手のレベルが向上せず、プロ意識が欠けていることへの長年の不満の裏返し。田舎のアマチュアアスリートが示す献身的プレーと情熱にひかれている」と分析している。村BAと村超は、地方の住民に誇りと収入をもたらし、プロスポーツ界にハッパを掛ける存在となっている。(c)東方新報/AFPBB News