【7月21日 AFP】作曲家ベートーベン(Ludwig van Beethoven、1770~1827年)のものと推定される頭骨の破片が、米国人実業家から死没地オーストリアのウィーン医科大学(Medical University of Vienna)へ寄贈された。専門家らが20日、発表した。

 オーストリアの検視官クリスチャン・ライター(Christian Reiter)氏によると、この破片は唯一現存するベートーベンの頭骨と考えられる。計10個あり、後頭部と右側頭部のそれぞれ大きな破片2個が含まれている。

 寄贈した米国人実業家ポール・カウフマン氏は、1990年にフランスの銀行にある一族の貸金庫で「ベートーベン」と書かれた小さな箱の中からこの破片を見つけた。

 ユダヤ人のカウフマン一族は、ナチス・ドイツ(Nazi)を逃れてオーストリアから避難した。カウフマン氏の大おじにあたるフランツ・ロメオ・セリグマン氏がウィーンで医師をしていた関係で、1863年にベートーベンの墓の発掘が行われた際、破片を手に入れたと推測される。

 米エネルギー省傘下のアルゴンヌ国立研究所(Argonne National Laboratory)がこの頭骨片を検査したところ高濃度の鉛が検出された。過去にベートーベンの毛髪から検出されている鉛と一致したという。

 カウフマン氏によると今後、詳細な分析による判定が待たれるが、ベートーベンのものである可能性が有望視されている。

 ベートーベンの死因については毛髪の研究から鉛中毒とされていたが、今年3月にゲノム(全遺伝情報)を解読したと発表した研究チームは、飲酒など複合要因に伴う肝硬変だった可能性が高いと推定している。(c)AFP