【7月14日 東方新報】三国時代に蜀の都が置かれた中国・四川省(Sichuan)の成都市(Chengdu)は、歴史マニアではなくとも一度は訪れたい都市の一つ。麻婆豆腐に代表される本場の四川料理を味わった後に、ジャイアントパンダの繁殖研究基地を訪れるという盛りだくさんの旅行も実現不可能ではない。

 元々観光資源の豊かな成都だが、今年はさらに盛り上がりを見せそうだ。夏の観光シーズンを前にした6月29日に同市で開催されたのは、「東アジア文化都市」としての活動を記念する開幕セレモニー。四川省の伝統芸能で、一瞬にして踊り子の仮面が変わる「変面」のパフォーマンスなどが舞台の上では披露された。

 東アジア文化都市とは、日本、中国、韓国の3か国の文化大臣会合で合意されたプロジェクト。毎年都市を選定し、文化交流や芸術イベントを通じて相互理解や東アジアの発信力強化を目指す。23年は中国の成都市と梅州市(Meizhou)、日本の静岡県、韓国の全州市が選ばれた。中国文化観光部の国際交流協力局、石沢毅(Shi Zeyi)副局長は、中日韓三国が隣国であり歴史や文化の関係が深いと指摘した上で、「東アジア文化都市に選ばれたことをきっかけに、成都が、日本の静岡県や韓国の全州市と協力し合って三か国の人文交流、文化融合、市民間の相互理解の助けとなるよう希望する」と述べた。

 また静岡県の川勝平太(Heita Kawakatsu)知事もオンラインで祝辞を寄せ、互いが東アジア文化都市になったことを契機に、文化や各分野で協力を強化し、新たな関係を築いていくことへの期待を表明した。開幕セレモニーでは、「最も美しい東アジアの都市」と銘打った10の観光ルートも紹介され、更なる観光客の増加が期待できそうだ。

 同日午前には、ユニバーシアード特別仕様の列車が正式に運行を開始し、第一号車が成都東駅から四川盆地の西縁に位置する雅安市(Ya’an)に向けて出発した。

 これは成都で7月28日から8月8日まで開催される学生のためのオリンピック、第31回ユニバーシアードを盛り上げる狙い。開催期間中には約170の国と地域から1万人以上の選手や関係者が訪れる予定。特別仕様の列車の外装には躍動するスポーツ選手のデザインが施されており、車内には雰囲気を盛り上げる様々な工夫がされている。スポーツと四川省の伝統的文化、パンダの要素などを融合させたものといい、乗客を楽しませてくれることは間違い無い。約1か月という期間限定のこの特別仕様の列車には、成都と重慶市(Chongqing)を往来する高速鉄道も含まれ、利用客は20万人を超える見込みという。

 これだけではなく、成都は今後も訪問客に魅力的な都市作りを続けることだろう。だが、むしろきっかけは何でもよく、大事なのは一人でも多くの人が地元の人々との交流や文化を通じて、国や民族の違いを理由にいがみ合うことの無意味さを知ることだろう。(c)東方新報/AFPBB News