【7月4日 東方新報】「今では毛戈平(Maogeping)のコンシーラーがないとメイクができないわ」

 そう話すのは韓国の美容ブロガー。毛戈平とは中国発の化粧品ブランドの一つ。かつて中国の化粧品は海外ではおろか、国内でさえ知名度は低く人気も全くなかった。

「フランスが輸出する口紅の3本に1本は中国の消費者が買う」と言われたように、中国での化粧品は圧倒的な輸入超過が続いていた。ところが、中国ブランドの化粧品は今や国内での人気のみならず韓国のメイクショップに並び、日本の美容ブロガーにイチオシされるまでになった。

 浙江省(Zhejiang)温州市(Wenzhou)龍湾区(Longwan)の消費者権益保護委員会が行ったアンケートは、国産化粧品ブランドの成長ぶりを示している。調査対象者の7割以上が5〜10種の国産ブランドを知っており、4割以上が使用した経験があった。また、国産ブランドの消費者の7割以上は20歳〜35歳の若年層、消費者の8割以上が国産ブランドに満足感を示した。

 花西子(Florasis)、花知暁(FlowerKnows)、完美日記(Perfect Diary)などの国産化粧品ブランドは、中国女性の化粧台に並ぶ「常連」となっている。ネット通販大手が安売り祭りを仕掛けて、中国全土で「爆買い日」となる11月11日や6月18日には、海外の有名ブランドの売り上げを超えるものさえあるという。

 中国の化粧品ブランドは海外の消費者にも認められる存在となった。中国風でエキゾチックなデザインを前面に出して人気を得ている花西子は、すでにオンラインショップなどを通じ100以上の国と地域に販路を築いた。2月には日本の原宿でポップアップイベントを開催、今年中には東京に海外初となる実体店での専門販売スペース設ける予定となっている。

 税関の統計でも中国の化粧品の輸出は増加している。2022年の化粧品類の輸出額は57億2000万ドル(約8264億8280万円)。5年前より19億ドル(約2745億3100万円)以上増えた。同年の輸入額は223億9000万ドル(約3兆2351億3100万円)。相変わらず166億7000万ドル(約2兆4086億4830万円)の輸入超過状態ではあるが、前年2021年と比較すると輸入額、貿易赤字額ともそれぞれ10.2%、14.3%減少している。

 中国ブランドが既存の国際的なブランドと競い合うには、もちろん品質が重要だが、詳細なマーケティングに基づくデザインやプロモーションのローカライズが鍵となる。完美日記は、ベトナムで人気の歌手アミー(AMEE)をイメージキャラクターに採用し、東南アジアの人の皮膚の色にマッチする小豆色やバラ色の口紅を売り出した。SNSの利用も必須だ。花西子は、日本で人気の美容ブロガーとのコラボで、「中国メイク」のノウハウ動画を作成、自社商品や東洋的な美を紹介して「中国メイク」のブームまで巻き起こした。

 2022年から正式に発効した、日本や中国を含む東アジアの地域的な包括的経済連携(RCEP)協定の存在も追い風となっている。2022年のRCEP参加国への中国の化粧品の輸出額は15億1000万ドル(約2181億7990万円)、発効前の2021年比で53.8%増。中国の化粧品の輸出全体の26.4%を占めるに至った。

 ただ、後発の中国ブランドは既存の国際的なブランドとは研究開発の能力でまだ差があり、特に原料の開発が課題だという。

「自主研究開発能力の不足により、我が国の化粧品の原料は長期的に輸入に依存してきました。原料はまさに製品の効果を左右し消費者が注目するポイントです」

 中国医薬保健品輸出入商会の王茂春(Wang Maochun)副会長は、国産ブランドが長期的に競争力を保つためには、開発能力の重要性を強調する。その上で、常に国内外の消費者の嗜好(しこう)に敏感であり続け、市場の要求をみたすような新しい原料、技術、商品の開発を続けなければならないと訴える。

 化粧品はぜいたく品。中国ブランドの化粧品が消費者から受け入れられるようになったのは、すでに中国は豊かな国というイメージが定着したことをも示しているのだろう。(c)東方新報/AFPBB News