【8月27日 AFP】中東イエメン南西部の都市タイズ(Taez)で、サリム・ムハンマドさん(14)は夜明けとともに家を出る。約1.6キロ離れた給水所で水をくむためだ。身近では水を入手することができず、給水所はここが最も近い。

 ムハンマドさんらきょうだい3人は学校に間に合うように給水所に向かうが、順番が来るまで数時間かかることもある。

 ムハンマドさんはAFPに、「毎日水を背負うので、腕や背中が痛い」と話した。

 イエメンでは2014年、イランが支援するフーシ派(Huthi)が首都サヌアを制圧。翌15年にはサウジアラビア主導の連合軍が政府の要請により軍事介入した。だが、水不足は内戦以前から深刻で、子どもや若者への負担は日常的にみられていた。

 専門家らは、内戦により主要インフラが破壊されたほか、気候変動による気温上昇や降雨量の変動が水供給を悪化させたと指摘する。

 国連食糧農業機関(FAO)は今のままだと、イエメンでは20年以内に地下水が枯渇する恐れがあるとしている。

■「水不足による悲劇」

 ムハンマドさん一家は、紅海(Red Sea)に面した港町ホデイダ(Hodeidah)での戦闘から逃れ、政府の拠点タイズ(Taiz)に移った。だがタイズも長年、フーシ派に包囲されている。

 FAOによると、同国では人口の半数に当たる約1450万人が安全な飲料水を入手できていない。中でもタイズの水不足は深刻だという。

 赤十字国際委員会(ICRC)のイエメン副代表ラルフ・ワフベ(Ralph Wehbe)氏は、水道の普及率は30%に満たないと指摘。民間企業や安全ではない井戸に頼っている人も多いという。

 同氏はAFPに対し、「子どもが特に影響を受けている」と話し、「学校に行く代わりに家族のための給水に数時間費やすことを余儀なくされている」「水不足による悲劇だ」と強調した。

 タエズのサミル・アブドゥルワーヒド(Samir Abdulwahid)水道局長は、「市内の約60%では、内戦開始以降、一滴の水も供給されていない」と説明する。同氏もまた、水危機により犠牲になるのは子どもだと指摘した。

「子どもたちは学校に行っていない」「水を確保するために、給水所に行かされている」 (c)AFP