【6月20日 AFP】欧州では1980年代以降、世界平均の2倍のペースで温暖化が進んでいることが、19日公開された国連(UN)と欧州連合(EU)による報告書で明らかになった。昨年は観測史上最も暑い夏となった。

 国連の世界気象機関(WMO)とEUの気候監視ネットワークであるコペルニクス気候変動サービス(C3S)がまとめた報告書「欧州の気候の現状2022(State of the Climate in Europe 2022)」は、欧州ではこの結果、干ばつで作物が枯れるほか、記録的な海水面温度や前例のない氷河の融解が起きると指摘している。

 昨年の気温は産業革命前に比べ約2.3度高かった。英国、フランス、ドイツ、イタリア、ポルトガル、スペインなどでは史上最も温暖な1年となった。報告書は、気候変動に伴い、生命を脅かすような熱波がより頻繁に起きるようになると指摘している。

 世界の気温は、1800年代中頃と比べ平均1.2度近く上昇している。

 報告書によると、欧州の気温は1991~2021年の30年間で1.5度上昇した。

 欧州では昨年、高温により1万6000人以上が死亡。極端な気候を原因とする損害額は20億ドル(約2830億円)相当に上り、その大半は洪水や嵐によるものだった。

 C3S幹部、カルロ・ブオンテンポ(Carlo Buontempo)氏は報告書で「残念ながら、一度限りの出来事や変則的な現象だと考えることはできない」と指摘した。

 欧州の大半の地域では昨年、降水量が例年を下回った。農業生産は打撃を受け、貯水池の水位は下がり、山火事が発生しやすい条件がそろった。フランス、スペイン、ポルトガル、スロベニア、チェコの各地で大規模な山火事が発生。総延焼面積は欧州史上2番目の規模となった。

 スペインの貯水量は昨年7月までに総貯水容量の半分以下にまで減った。フランスでは農地の一部でかんがいができず、ドイツでは干ばつで穀物やブドウの収穫に大きな影響が出た。(c)AFP/Kelly MACNAMARA