【6月6日 AFP】南アフリカのヨハネスブルク近郊で、初期ヒト属と考えられている「ホモ・ナレディ」による世界最古の「墓」を発見したとする査読前論文が5日、公表された。ホモ・ナレディは脳の容量が小さく、死者を埋葬するなどの「意味付けされた」複雑な活動はできないと考えられてきたため、人類の進化についての通説に疑問を投げ掛けるものとなる。

 著名な古人類学者リー・バーガー(Lee Berger)氏が率いる研究チームによると、ホモ・ナレディの骨はヨハネスブルク近郊の遺跡群「人類のゆりかご(Cradle of Humankind)」のライジング・スター(Rising Star)洞窟の地下約30メートル地点に埋められていた。同遺跡群は国連教育科学文化機関(UNESCO、ユネスコ)の世界遺産(World Heritage)に登録されている。

 研究チームは、「現生人類(ホモ・サピエンス)」による埋葬の証拠より少なくとも10万年は古く、「ヒト亜科の記録では最古の墓」としている。

 これまでに最古とされている墓は中東とアフリカで発見された約10万年前のもので、ホモ・サピエンスが埋葬されていた。しかし、今回バーガー氏らが発見した墓は、少なくとも紀元前20万年前にさかのぼる。

 ホモ・ナレディはバーガー氏により発掘された。類人猿と現生人類の特徴を併せ持ち、脳の大きさはオレンジほどで、身長は約1.5メートル。指やつま先が湾曲し、道具の作製や直立歩行、木登りに適した手足を持ち、現生人類に至るこれまでの進化の通説を覆した。

 ホモ・ナレディの骨の化石は、2013年に初めて発見された。今回の研究対象となる楕円(だえん)形の墓は18年に始まった発掘調査で見つかった。

 研究チームによれば、意図的に穴を掘り、遺体を埋めたとみられる形跡があり、穴には少なくとも5人の遺骨が埋められていた。

 研究チームは「今回の発見は、埋葬がホモ・サピエンスなど脳の容量が大きいヒト属だけの慣習ではなかったことを示している」と主張。さらなる分析が必要とした上で、「人類の進化についての理解が改められる」ことになるだろうとしている。(c)AFP/Claire DOYEN