【5月10日 AFP】初期ヒト属と現生人類は、同時期にアフリカで共存していた可能性があるとする最新の研究結果が9日、発表された。人類進化の理解を変える可能性のある成果だという。

 南アフリカにあるライジング・スター(Rising Star)洞窟の奥深くで2013年に発見された化石については、複数の専門家チームが実施した年代測定で「ホモ・ナレディ(Homo naledi)」と呼ばれる初期ヒト属の生存時期が、現生人類ホモ・サピエンス(Homo sapiens)と重なっていた可能性があることを示唆する結果が得られている。

 ホモ・ナレディの化石をめぐってはこれまで、数百万年前のものと考えられていた。

 南アフリカとオーストラリアを含む世界各地の研究機関の科学者20人からなる研究チームは今回、この化石の年代を定めた。結果、ホモ・ナレディが現生人類と同時期に共存していた可能性があることを示唆するものとなった。研究結果は9日、科学誌「eLife」に掲載された3件の論文で発表された。

 今回の研究の焦点となっているのは、到達することすら難しいとされるライジング・スター洞窟。ヨハネスブルク(Johannesburg)の北西50キロにある遺跡群「人類のゆりかご(Cradle of Humankind)」の一部だ。国連教育科学文化機関(UNESCO、ユネスコ)の世界遺産(World Heritage)にも登録されているこの遺跡群からは、これまでに数多くの考古学的遺物が出土している。

 研究プロジェクトを率いる南ア・ウィトウォーターズランド大学(University of the Witwatersrand)の研究者のリー・バーガー(Lee Berger)氏は「ホモ・ナレディの年代に関しては多くの臆測がなされてきた。骨格を調べた全ての研究者らは、数百万年のものと考えられることを示唆している」と話し、この脳の小さなヒト科動物種がホモ・サピエンスと実際に遭遇していた可能性についても指摘した。

 今回の研究では、6種類の独立した分析手法を用いてホモ・ナレディの化石の正確な年代を決定。その年代を23万6000年から33万5000年の間と推定した。これは現生人類が行動を始めた時期の初期に当たると、バーガー氏は説明する。

 他方で、米ウィスコンシン大学(University of Wisconsin)の研究者であるジョン・ホークス(John Hawks)氏は、今回の化石とは別に、完全な状態の頭蓋骨を含む新たなホモ・ナレディの化石が他の2つの洞窟で見つかったことを明らかにし、「他のどの一般的な種とも大きく異なる身体構造上の傾向が認められることが確認できた」としている。