■韓国の「集団的トラウマ」

 教育熱心な韓国では、学校や塾で1日16時間勉強する子どももいる。政府はいじめの根絶策を講じているが、専門家によると、いじめは一向に減っていない。

 いじめ問題に取り組む人々は、問題は、学校現場では加害者が直ちに処罰されないことが多く、こうした犯罪には時効があるため、被害者が何年かたって訴えようとしても法律の壁に阻まれることだと指摘する。

 ピョさんは、学校で暴力を受けたことで何年も不眠症やうつに悩まされた。だが、人目を避けて生きるのをやめ、加害者を告発し、自身が受けていた仕打ちを公表することにした。その結果、加害者の1人は仕事先で解雇されたという。

 ソウル在住の弁護士で、学校での暴力事件を専門に扱うノ・ユンホ(Noh Yoon-ho)氏はAFPに、「韓国で学校に通ったことのある人なら誰でも、被害者になるか、誰かがいじめられているのを目にしながら助けずに傍観者になっていた経験がある」と話す。いじめ問題は、この国が対処しなければならない「集団的トラウマ」だと指摘した。

「学暴#MeToo」は多くの被害者にとって、恥を克服し、いじめられたのは「自分に落ち度があるせい」ではないという気付きを得るのに役立っていると付け加えた。

■いじめた側が名誉毀損で訴えることも

 しかし、未成年の時に犯した罪を大人になってから法的に罰することは、現実的には非常に大きな問題があるとノ氏は話す。10代の時の犯罪で、いつまでも前科を問われる可能性があるためだ。

 被害者を応援する動きは世間で広がったが、加害者への処罰の妥当性を疑問視する向きもある。

 後からこうした処分を下すより、黙殺することが多い学校と協力し、いじめの発生時に確実に対処するほうがはるかに良いと専門家は指摘する。

 一方、ピョさんは「名誉毀損(きそん)法が改正されない限り、いじめた側が裁判を切り札にして被害者を脅すことができる」と話した。

 実名で声を上げられないのは、まさにこうした理由からだとピョさんは言う。「(現行の)名誉毀損法がなくなれば、数え切れないほどの被害者が声を上げ始めるだろう」と話した。(c)AFP/Claire LEE