【5月30日 AFP】男子テニスのノバク・ジョコビッチ(Novak Djokovic、セルビア)は29日、全仏オープン(French Open 2023)の試合後にカメラに向かって「コソボはセルビアの心臓だ。暴力をやめろ」と記し、物議を醸した。コソボ北部では現在、セルビア系住民と警察の衝突で緊張が高まっている。

 セルビアの首都ベオグラード出身のジョコビッチは、この日コート・フィリップ・シャトリエ(Court Philippe-Chatrier)で臨んだアレクサンダル・コバチェビッチ(Aleksandar Kovacevic、米国)との1回戦で勝利すると、セルビア語でこのメッセージを書いた。

 セルビアのメディアに対しては「コソボはわれわれの発祥の地であり、拠点であり、わが国にとって最も重要な中心地だ。カメラに向かってそう書いた理由はたくさんある」と述べた。

 コソボ北部では先月、セルビア系住民が選挙をボイコットして有権者の3.5パーセント以下というわずかな投票率となったにもかかわらず、アルバニア系住民が地元議会の主導権を握ることになった。

 こうした民族間の緊張が高まっている中で、選出されたばかりのアルバニア系市長の排除を要求してセルビア系住民がこの日再び警察と衝突。北大西洋条約機構(NATO)主導の平和維持軍が鎮圧に乗り出し、その際に兵士約25人とデモ隊50人以上が負傷した。 

 ジョコビッチは「自分は政治家ではないし、政治的議論に関わるつもりはない。これはとても繊細な話題だ」とした上で、「もちろん、コソボでの出来事や、わが民族が地方議会から実質的に排除されたやり方を目の当たりにして、セルビア人としてとても心を痛めている」と語った。

「公人としてだけでなく、コソボで生まれた男の息子として、同胞とセルビアへの包括的な支援を表明するさらなる責任を感じている」 (c)AFP