【5月24日 AFP】中国・清朝最後の皇帝、愛新覚羅溥儀(Aisin-Gioro Puyi)がかつて所有していたスイスの高級時計メーカー「パテックフィリップ(Patek Philippe)」製の腕時計「Ref 96 Quantieme Lune」が23日、香港で競売に掛けられ、4000万香港ドル(約7億円)で落札された。手数料を加えた総額は、4885万香港ドル(約8億6400万円)。

 落札予想価格は2500万香港ドル(約4億4200万円)だったが、約5分間の激しい入札合戦の末、4000万香港ドルで落札された。

 溥儀は1906年生まれ。08年に2歳で皇帝に即位し、12年に辛亥革命で退位。32年に日本の傀儡(かいらい)国家「満州国」の執政、34年に皇帝となった。45年の日本敗戦後、ソ連軍に捕らえられ、強制収容所に抑留された。

 競売を主催した英競売会社フィリップス(Phillips)によると、溥儀がこの腕時計を収容所に持ち込んだことを示す証拠書類がある。

 溥儀のおいの回顧録によると、腕時計は溥儀の「私物」で、収容所を離れる際に溥儀のロシア語通訳を務めたゲオルギー・ペルミャコフ(Georgy Permyakov)氏に託された。

 ペルミャコフ氏を20年以上前にインタビューし、フィリップスの調査チームにも加わったジャーナリストのラッセル・ワーキング(Russell Working)氏によると、ペルミャコフ氏は引き出しからこの腕時計を取り出した時、その価値にまったく気付いていなかった。ワーキング氏は「長い年月を経て突然出てきたこの時計は、まるで浜辺に打ち上げられた宝箱のようだった」とAFPに述べた。

 溥儀が「同志ペルミャコフ」にささげた詩が書かれた扇子も競売に掛けられ、落札予想価格の6倍となる60万9600香港ドル(約1100万円)で落札された。(c)AFP/Anagha NAIR