アメリカ大陸に最初に到着の人類、一部は中国から
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【5月10日 AFP】現生人類が最後に定住した大陸は南北米大陸だが、いつ、どのように到達したのかは長年、議論の対象となってきた。米科学誌セルリポーツ(Cell Reports)で9日、最初に到達した人類の一部は中国からやって来たとする研究結果が発表された。
以前は、現在のロシアとアラスカを結ぶベーリング海峡(Bering Strait)が陸続きだった頃、「ベーリング陸橋」を渡って来た古代シベリア人がアメリカ大陸の先住民の唯一の祖先と考えられていた。
だが、2000年代後半以降の研究では、アジアから渡来した人類がボリビア、ブラジル、チリ、エクアドル、メキシコ、カリフォルニアなどアメリカ大陸の人口を形成した古代の系統につながる可能性が指摘されてきた。
この系統はミトコンドリアDNAのハプログループD4hとして知られる。ミトコンドリアDNAは母親から受け継がれるため、母系ルーツをたどるのに使用されている。
中国の昆明動物研究所(Kunming Institute of Zoology)の研究チームは10年かけて、ユーラシア大陸の現代人のDNAサンプル10万個と古代人のサンプル1万5000個を調べたところ、現代人216人と古代人39人がD4hに属していたことが分かった。
さらに、サンプルの地理的位置と放射性炭素年代測定によってD4hの起源と分布の歴史を再構築し、長年にわたり徐々に生じた変異を分析した。
この結果、中国大陸からの移住は2回起きていたことが明らかになった。
1回目は最終氷期極大期の2万6000~1万9500年前で、この時期は氷床面積が最大に達しており、気候条件から中国北部が居住に適さなかった可能性がある。
2回目は、氷河が融解した1万9000~1万1500年前で、人口増加に伴い移住が始まったとみられる。
研究チームによれば、いずれの場合も、米州大陸まで来た人々は太平洋沿岸部を船で移動したと考えられる。現代のカナダの氷床2か所の間にできた内陸の「無氷回廊」は、この時期はまだ出現していなかった可能性があるためだ。
研究チームは、2回目の移住では、中国北部の沿岸部に由来する遺伝グループのサブタイプが、日本人(縄文人)や先住民族アイヌに分布していると指摘。米州大陸や中国、日本で発見された先史時代のやりや矢尻が類似している説明にもなり得るとしている。
論文著者の一人、ユーチュン・リー(Yu-Chun Li)氏は、中国北部の沿岸部のどの場所から人類が移動し広がっていったのか、また、移住の引き金となった具体的な出来事を明らかにするには、古代ゲノム情報をさらに解析する必要があると述べている。(c)AFP/Issam AHMED