【5月13日 AFP】米ハリウッドの脚本家団体が今月、報酬をめぐりストライキを断行した。動画配信大手ネットフリックス(Netflix)やディズニー(Disney)といった製作スタジオは、将来的に人工知能(AI)に脚本を執筆させる可能性を排除しないとしており、団体側は反発を強めている。

 対話型AI「チャットGPT(ChatGPT)」のような人工知能プログラムは、人間の会話を不気味なほどに模倣する能力を高めており、さまざまな業界を震撼(しんかん)させている。ジョー・バイデン(Joe Biden)政権もこのほど、ビッグテック(巨大IT企業)のトップを招き、AIの潜在的なリスクについて意見交換を行った。

 そうした中、脚本家が加入する全米脚本家組合(WGA)とスタジオや配信会社との間で行われていた契約更改交渉が今月1日、決裂。交渉でWGA側は、AI利用を規制する拘束力のある合意を求めていた。

 WGAは、AIを使って製作されたものについては印税が支払われる作品と認めないことを求めるとともに、組合加入の脚本家の作品が「AIの学習に利用」されないよう要求した。

 だが、スタジオ側は要求の受け入れを拒否し、「技術進歩について話し合う」ため、年1回の会合を開くとの対案を提示するにとどめた。

 ネットフリックスのヒット作『バード・ボックス(Bird Box)』の脚本を手掛けた、WGA交渉委員会のメンバーであるエリック・ハイセラー(Eric Heisserer)氏はAFPに、「われわれを排除するためにAIを活用する方法を話し合う会合だ。なんて素晴らしい提案だ」と皮肉った。

 ハイセラー氏は「機械ではアートを生み出せない。ストーリーから心や魂が失われてしまう。そもそも、AIのAは『Artificial(人工の)』を表しているのだ」と指摘。さらに、「テック企業はこの業界への進出を試みる中で(脚本の)仕事そのものを壊す恐れがある。要注意だ」とも述べた。