【5月4日 AFP】フィンランドの主要日刊紙ヘルシンギン・サノマット(Helsingin Sanomat)は3日、ウクライナ侵攻についてロシアがメディア統制をし、市民から隠している情報を、人気のオンラインゲームを通じて発信していると明らかにした。

 アンテロ・ムッカ(Antero Mukka)編集長はAFPに対し、「ヘルシンギン・サノマットをはじめ外国の独立系メディアはロシアでは閉鎖に追い込まれたが、オンラインゲームはこれまでのところ禁止されていない」と述べた。

 同紙が利用しているのは、ロシアにも多くのファンがいるチーム対戦型戦闘ゲーム「カウンターストライク(Counter-Strike)」。対テロ部隊とテロリストの戦いがテーマとなっている。

 試合の多くは配信元のバルブ・コーポレーション(Valve Corporation)が提供する公式マップなどで行われる。しかし、プレーヤーも独自のマップを作成することが可能で、他のプレーヤーもそのマップをダウンロードや利用できる。

 ヘルシンギン・サノマットの発表は、3日の世界報道自由デー(World Press Freedom Day)に合わせたもの。「報道の自由の重要性を強調するため、ボイナ(Voyna、ロシア語で戦争の意)という名のスラブの都市をつくった」としている。

 ボイナの街並みは旧ソ連をほうふつとさせる。そのアパートの地下で、プレーヤーはウクライナ特派員による侵攻関連の記事のロシア語版を読むことができる。ロシア語で収録された記事の音声版がバックで流れる。

 赤く照らされた部屋の壁はウクライナのブチャ(Bucha)やイルピン(Irpin)での虐殺を伝える記事や写真で埋め尽くされている。民間人への攻撃の詳細が記された地図も張られている。

「ウクライナでの戦争の現実について、私たちが発見した資料に触れることができる」とムッカ氏。「ロシア国営メディアのプロパガンダでは伝えられない情報だ」

 どこからアクセスしているかは追跡できないが、1日のリリース以来、2000回以上ダウンロードされている。ムッカ氏はロシア人400万人がプレーしたと推測している。

 ムッカ氏は「ロシアの人にも事実に基づいた、独立した情報を知る権利がある。彼らはそうした情報を通じて人生において選択できるようになる」と強調した。(c)AFP