【4月27日 AFP】国連(UN)は26日、中米ハイチでギャングによる暴力が急増しているとして、秩序回復に向け国際部隊の派遣を改めて呼び掛けた。

 ハイチ問題に関する国連特使のマリア・イサベル・サルバドル(Maria Isabel Salvador)氏は安全保障理事会(Security Council)で、首都ポルトープランスや周辺地域のかつて比較的安全とされていた地区で、過去3か月間に暴力犯罪が「衝撃的な」ペースで増加していると指摘した。

 ハイチ警察と国連の統計によると、殺人、レイプ、誘拐、リンチなど暴力犯罪の件数は今年1~3月は1647件と、前年同期(692件)の2倍以上になった。

 同氏は、国連が行った聞き取り調査の結果、「ギャングが集団レイプを含む性的暴力を通じ、対抗勢力の支配地域の住民に恐怖と苦痛を与えている実態」も明らかになったと述べた。

 凶悪犯罪の犠牲者には子どもも含まれ、教室で撃たれたり、学校への送迎の車から降りたところで誘拐されたりする事件も起きているという。

 一方、首都では今週、住民がギャング組織の構成員とみられる十数人に投石し、生きたまま焼く事件もあった。

 サルバドル氏は、警察がほとんど機能しない中、「自分たちの手で問題解決を図ろうとする」住民が現れ始めていると指摘。こうした動きは「地域全体に予測不能な結果をもたらし、社会基盤の崩壊につながる」恐れがあると警鐘を鳴らした。

 ハイチでは2021年7月、コロンビア人傭兵を中心とする武装集団によってジョブネル・モイーズ(Jovenel Moise)大統領が暗殺されたのをきっかけに、治安が悪化の一途をたどっている。

 国連のアントニオ・グテレス(Antonio Guterres)事務総長は数か月前から安保理に対し、秩序回復を支援する国際部隊の派遣を求めているが、主導しようとする国が見当たらない状況だ。

 安保理に出席したハイチのジャン・ビクトル・ジェネウス(Jean Victor Geneus)外相は、過去48時間にも治安は一段と悪化しているとし、「手遅れになる前に迅速な行動を」と訴えた。(c)AFP/Amelie BOTTOLLIER-DEPOIS