安く歯医者に 「奥歯の街」目指す米国人 メキシコ
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■金銭的余裕がない
10年以上ロスアルゴドネスの歯医者に通うデービッド・バリーさん(64)は、米国人の多くは単に歯医者にかかる金銭的余裕がないと話した。
「米国ではほとんどの人が歯科の保険に入っていないか、適用範囲が狭い」
そのため大掛かりな治療は受けられず、バリーさんも「初めてここに来た時はたくさん治すところがあった。インプラントやかぶせ物を幾つかつけてもらった」という。
「カリフォルニア州での見積もりは3万5000(約480万円)ドルだった。ここでは確か6000~8000ドル(約80万~100万円)を払った」
現在アリゾナ州に住むバリーさんは、多くの人はメキシコの歯科技術が劣っているという先入観を持っているが、実際には最新技術が用いられていると話した。
米国側の国境には大きな駐車場があり、早い時間から埋まって行く。ロスアルゴドネスに来る人の大半は50歳以上のようだ。
車を降りるとすぐに若い男性が「おはようございます! 腕のいい歯医者はいかがですか?」と聞いてくる。
国境検問所にたどり着くまでに3回は同じセリフを言われる。
1985年に開業したルビオ医師は、最初の患者が来るまで4か月待ったという。だが、今では毎日30人から35人を診る。
ルビオ医師によると、米テキサス州ブラウンズビル(Brownsville)と国境を接するメキシコ・マタモロス(Matamoros)で3月上旬、複数の米国人が拉致され殺害される事件があったが、目に見えて患者が減ることはなかった。
事件は大きく報道され、いわゆる「医療観光」でメキシコを訪れる米国人の多さも浮き彫りになった。
しかし、AFPの取材では、不安を口にする患者は一人もいなかった。
バリーさんは、米国人は治安が心配だと言うが、自分は「ロスアルゴドネスは安全」だと感じているという。
ルビオ医師も「ここのコミュニティーにはそうした問題はない」と指摘する。「私たちは観光で生計を立てている。そういう問題はちゃんと処理する」と話した。(c)AFP/Paula RAMON