【1月11日 AFP】ブラジルで暮らすアナ・クラウディア・ロシャ・フェレイラ(Ana Claudia Rocha Ferreira)さん(39)は、わずか15歳の時から何人ものパートナーによるドメスティックバイオレンス(DV)を受けてきた。暴力はロシャさんの身も心もずたずたにした。「前歯は4本しかなかった。外出するのが恥ずかしかった」

 ブラジルには、ロシャさんのようにパートナーから暴力を受けた女性が数百万人いる。ほぼすべてのケースで男性は、女性らしさと自尊心を失わせるために被害者の顔や歯を殴る。

 だが、ロシャさんはリオデジャネイロ(Rio de Janeiro)の歯科医アルマンド・ピバ(Armando Piva)氏のおかげで自信と笑顔を取り戻した。ピバ氏は、虐待された女性たちの歯と人生の再建を目指す非政府組織(NGO)「アポロニアス・ド・ベン(Apolonias do Bem)」のボランティアとして活動している。

 デザイン会社に勤める黒人女性のロシャさんは、歯の治療は「夢のよう」で、人生が変わったと話す。だが、それまでは何度もつらい時期を乗り越えてきた。「暴力が始まったのは、長女を妊娠していた15歳の時だった」「私を殴るようになったので、彼の元を離れた。でもその後、次女の父親も暴力を振るうようになった。私の歯は、次々に抜けていった」

 ロシャさんは、リオデジャネイロ・サンクリストバン(Sao Cristovao)地区のファベーラ(貧民街)で暮らしている。「(この街の)男性は、女性を殴って、他の男たちが欲しがらないようにしたいと言っている。女性の顔に自分の印を残したいと」

 それでもロシャさんは、2番目のパートナーと別れることができなかった。収入がなかったし、若い頃に実家を追い出されていたので母親を頼ることもできなかった。「18歳の時から今まで、笑ったことがない」、「いつも恥ずかしい思いをしていた」。ロシャさんは涙ながらにそう話す。

 ある日、ロシャさんは憧れの女優のインスタグラム(Instagram)にメッセージを送った。金銭を無心したわけではなく、助けを求めたのだ。その女優のような美しい歯が欲しいと書き込むと、すぐにNGOのボランティア歯科医たちに連絡を取ってくれた。

 ピバ氏は、リオデジャネイロの高級地区バーハ・ダ・チジュカ(Barra da Tijuca)にある超近代的な歯科クリニックで、ロシャさんにインプラント治療を行った。治療には1年近くかかったが、ロシャさんは自信と笑顔を取り戻した。

 大きなリング形のイヤリングを着け、メークにも気を配るようになったロシャさんは、とても幸せだと言い、「二度と誰にも殴らせない」と断言した。