【4月18日 東方新報】世界最大の自動車市場・中国で今年に入り、前例のない自動車の値下げ競争が行われている。

 きっかけは1月初め、電気自動車(EV)大手のテスラ(Tesla)が価格改定を発表。上海工場で作られ、中国で人気の「モデルY」を28万8900元(約564万円)から25万9900元(約507万円)に、「モデル3」を26万5900元(約519万円)から22万9900元(約449万円)に値下げした。これを機に外資系、中国メーカーの値引き競争が始まった。

 トヨタ自動車(Toyota Motor)のEV「bZ4X」は昨年の19万9800元(約389万円)から16万9800元(約331万円)に値下げし、さらに13万9800元(約273万円)での限定販売も行った。

 中国では地域によって地元行政が自動車購入に補助金を出している。湖北省(Hubei)では、21万1900元(約413万円)のシトロエン(Citroen)C6が値下げと補助金が重なり12万1900元(約238万円)にまで引き下がり、全国的に話題を呼んだ。

 このほかアウディ(Audi)やBMW、中国メーカーも次々と値下げに踏み切り、約50社が100種類近くの自動車で値引きをしている。

 ディーラーによっては「買1送1(1台買えば、もう1台プレゼント)」というキャンペーンも。中国では「一つ買うと、もう一つおまけ」という売り方はお菓子やジュースではよく見かけるが、高額の自動車では異例なことだ。

 前例のない値引き合戦が起きているのは、複数の要因がある。まず、中国政府の自動車取得税優遇措置が終わるのを見越して、昨年末までに駆け込み需要があり、今年に入って動きが冷え込んだ。また、コロナ禍が収まり、市民が旅行や外食、ショッピングなど車以外にお金を使うようになった。さらに中国では今年7月から厳格な排ガス規制「国6B」が導入されるため、メーカーは在庫車両を一斉放出したい狙いがある。EVに関しては、バッテリーの原料となる炭酸リチウムの国際価格が下落しており、値下げしやすい面もある。

 中国自動車工業協会(CAAM)によると、中国の2022年の自動車販売台数は前年比2.1%増の2686万4000台。14年連続で世界最大市場を維持している。このうちEVなどの新エネルギー乗用車の販売台数は850万台で、乗用車全体の36%に達している。EVシフトを進める欧米企業をはじめ、各メーカーにとって中国市場でシェアを維持・拡大することは生き残りに欠かせないため、「異次元」の値引きレースでアクセルを踏み続けている。

 中国政府にとってNEVは国家の経済戦略の大きな柱であり、今年の国内総生産(GDP)の成長目標「5%前後」を達成するには、自動車産業の安定した伸長が欠かせない。CAAMは3月下旬に「価格競争は長期的解決策にならない」と声明を発表。値引き合戦にブレーキをかけるよう懸命となっている。(c)東方新報/AFPBB News