【3月22日 東方新報】中国では象牙の取引が禁止されているが、今もなお密輸入事件が続いている。

 上海浦東空港(Shanghai Pudong International Airport)の税関は3月初め、ある旅行客が象牙で作った菩薩(ぼさつ)像や腕輪など18点、計1キロをクラフト紙に隠し持っていたのが見つかったと発表した。客は「象牙の品物は3点だけ」と主張したが調査の結果、すべて象牙製と分かった。密輸担当部門が引き継いで捜査している。

 浦東空港では昨年12月も、旅行客が粉ミルク缶の中に象牙の腕輪、ペンダントなど10個、計162グラムを隠し持っていたのが見つかっている。

 広東省(Guangdong)広州市(Guangzhou)の広州白雲空港(Guangzhou Baiyun International Airport)では昨年12月、計1240グラムの象牙製品53個が押収された。中東からの国際便を降りた客のスーツケースの底に、細い筒状の物があり、その中にビーズのような物が隠されているのを税関職員がエックス線透視手荷物検査装置で発見。スーツケースを開くと釣りざおが4本あり、さおの内部から数珠状の象牙数十個がこぼれ落ちてきた。そのほか、象牙のクシや彫刻などが見つかった。

 天津市(Tianjin)では昨年1年間で約60キロの象牙製品を押収しており、各地で持ち込みが後を絶たない。

 象牙の国際商業取引はワシントン条約で1990年から禁止されているが、中国では裕福層を中心に象牙の装飾品や彫刻品がステータスシンボルとして人気があり、国内取引は活発だった。アフリカでは犯罪ネットワークにより年間2万頭を超えるゾウが犠牲となっており、中国の巨大市場が国際的な違法取引の一大要因となっていた。

 2015年の米中首脳会談で、習近平(Xi Jinping)国家主席と当時のバラク・オバマ(Barack Obama)大統領が象牙の国内取引を停止する措置を取ると共同で表明。中国は象牙製品の製造工場や小売店の操業を段階的に停止し、2017年12月31日に国内市場を完全に閉鎖した。現在も国内での製造・販売・取引を禁止している。

 中国の一連の措置に伴い象牙の闇取引価格も低下し、アフリカゾウの密猟が減少傾向になるなど、中国の対応は世界自然保護基金(WWF)など国際自然保護団体から評価を受けている。

 それでも象牙の違法取引がゼロになることは難しい。密輸による利益が見込め、工芸品として手に入れたい富裕層やコレクターも少なくない。中国の経済成長に伴い海外旅行に行く人が増え、気軽におみやげとして購入して帰国する人もいる。最近は象牙の消費地が北京市や上海市、広州市といった大都市から地方都市にも広がっている。

 コロナ禍が一段落し、これから国際的な人の出入りが活発となる。象牙の密輸も増加する恐れがあり、中国当局は神経をとがらせている。(c)東方新報/AFPBB News